サッカーも音楽もその国の文化や国民性、積み重ねられた歴史、地理的な
状況を反映しているところに面白さがある。
サッカーはさらに肉体と戦術がそれらを越えようとするところが痛快であったり
さらなる面白さがあるけれど、音楽も異種交配し、無国籍、ボーダーレスな状況
を作り出す創造性がスリリングであったり快感であったりする。
しかし、やっぱり国民性というのは中々抜けないし、それはそれで魅力なわけだ。
Joe Haiderはミュンヘン音楽アカデミー出身のジャズ・ピアニスト。
Wolfgang DaunerやMichael Nauraといったドイツで活躍したピアニスト同様に
モードやフリーの影響を受け革新性を追求しながらもリリシズムを感じさせる。
華麗であったりセンチメンタルであったり官能的過ぎる事のない選ばれた音使い、
タッチがドイツっぽい硬質のリリシズムと緊張感を生み出していく。
オープンスペースへ走りこみ優雅なパスワークというよりは寧ろ少ないパスで
チャンスを広げていく理詰めのサッカーのようだ。
アグレッシヴとロマンティシズムが常に交差しながらも散漫にならないドイツ人
らしい知的なバランス感覚が素晴らしい。
『Katzenvilla』はパーカッシヴながら繊細さを併せ持つドラマーPierre Favreと
多彩な表現力を持ったべーシストIsla Eckingerのリズム隊のヨーロッパっぽい
シャープな感性がHaiderの創造性をサポートした名作だ。
3人が一体となって自由度の高い多彩なアンサンブルを展開していく。
全曲Haiderの手による作品(三人の共作1曲含む)であるところも良い。
優れたコンポーザーでもあるHaiderの面目躍如だ。
HaiderはFour For Jazz&Benny Bailyでもエレピ(Wurlitzer!)を弾いたりしていて
中々がんばっているけれど、やはりジャケットも含めて『Katzenvilla』が一番好きな
作品だ。
確か2000年にCD化されているはず。
Hit-C Fiore