早すぎたホワイトファンクバンドUppはギターレスのトリオ編成。
Jeff Beckが『Blow By Blow』の頃にプロデュースを手掛けて
デビューアルバム『Upp』を発表する。
Beckは殆んどの曲でアイデア溢れる黒っぽいギターを弾いている。
当時はBeck絡みで、それなりに評判になったのだろうか?
しかし、このバンドの魅力はファンキーながらも英国のバンドらしい
メロウな部分も併せ持つところにある。
何よりAndy ClarkのRhodes,clavinet,Moogという三種の神器に
メロトロンまで駆使したキーボード・ワークが最高である。
さらにファルセットを織り交ぜたソウルフルなヴォーカルが良い。
Andyは元々は60年代末にClark Hutchinsonで鍵盤、管楽器を
演奏し、ソウルフルなヴォーカルで一種独特のサイケデリックで
瞑想的なアングラな音楽をやっていた。
その黒っぽさは筋金入りなのである。
そしてBeckといえば殆んどの曲でおそらくレスポールを弾いて、
ファンキーなバンドのキャラクターを理解したアイデア溢れる多彩な
黒っぽいギターワークでサウンドにダイナミズムを与えている。
BeckはStevie Wonderの名作『Talking Book』に参加したり
元々好きであっただろうR&B,ファンクに最も強く傾倒していった時期
だと思われる。
特に『Blow By Blow』でのDrsのRichard Bailyのファンク・ビートと
エレピを多用したMax Middletonからの影響は大きいと思う。
しかしUppのアルバムでは、Beckは自らの作品に比べてもより一層
黒っぽいファンキーなBeckのギターを炸裂させている。
Beckが追求する様々なファンク・ギター奏法を、この作品で披露
しまくっているという感じである。
特にトーキング・モジュレイターを多用し、その使い方はBeck自身
のソロアルバムやBB&A以上に黒っぽくカッコイイ。
トーキングの文句なしのかっこよさ以外にもにも創造性溢れるBeckの
ギターが素晴らしい。
‘Bad Stuff’はオクターバーとトーキング・モジュレイターと組合わせた
アイデア溢れるバッキング、さらにソロもカッコイイ。
‘Get Down In The Dirt’も伸びやかなスライド・ギターが優美。
BeckはUppが正式ギタリストを迎えて4人編成となった2ndにも数曲
だが参加しており、余程このファンキーなバンドが気に入ったのだろう。
しかし残念な事にUppはアルバム2枚を残して解散してしまう。
3rdのお蔵入り音源も是非聴いてみたい。
才能溢れるAndyはその後、ブリティッシュ・モダン・ポップの雄ともいう
べきBe-bop De Luxeに加入、またDavid Bowieのアルバムで
キーボードを弾いたり、イギリスで人気のある女性シンガーの
Judie Tzukeとも仕事をして現在も音楽活動を続けているようだ。
Hit-C Fiore