「マイナスイオンドライヤーなどの美容家電製品は廃止すべきです」。
大手電器メーカーに勤める科学マニアの羽嶋賢児は、自社の目玉製品にダメ出しをするというタブーを犯し、最も行きたくなかった商品企画部に異動になる。
心から科学を愛する賢児は、似非科学的な効果を宣伝して売り上げを伸ばそうとする美容家電商品を許せなかったのだ。
だが正論を振りかざす彼は、鼻つまみ者扱いに。
まっすぐすぎる科学愛は、美容家電を変えることができるのか?
僕は間違いなくバリバリの文系である。(じゃなきゃ本屋なんてやるかい)
文系とか理系とかの明確な線引きはよくわからないし、
たいていの人が両方にクロスオーバーしているものだと思うから、
その分け方に意味があるとは思えないけれど、
学生時代にどっちの成績が良かったかと言えばこれはもう圧倒的に文系科目である。
というより、理系科目は目を覆いたくなるような成績であった。
国語と英語と社会科がなければ大学になんて絶対行けていない。
そんな僕ですが、物事の考え方は本当に全部理詰めで、このあたりはちょっとだけ理系の感じを醸し出すのです。
考え方は、基本、科学の信奉者。オカルトはもちろんのこと似非科学は完全否定。
この物語の主人公と同じく、「マイナスイオンなんて存在してるかどうかもわかんねえものになんで金払うんだよケッ」とか思っています。
主人公ほど極端ではないにせよね。
主人公はもともと科学大好き少年だったのが、周囲の(特に姉の)理解の無さや、
父親が癌に罹患したときにオカルトに溺れた母親の影響もあって、
ますます似非科学を嫌悪するようになっていきます。
それが「マイナスイオンを出すというドライヤーなんて売りたくない」に繋がっていくんですよね。
このあたりの極端さにはさすがに僕はついていけない。
僕は科学の信奉者である以前に、商売人ですから。
本が大好きだから、できれば良書(と自分が考えている本)しか売りたくないと思います。
誰とは言いませんが(僕の感想において)クズみたいな小説を書いている作家の本など、全部返品してやりたい。
でも、しない。だって売れるものもあるから。
売れるということに優先されることなんて何もない。
僕の好みや主義主張など、売上という数字の前には一切意味がない。
僕はそう考えています。
ところが、この主人公はそうはしないんだよね。
賢者(科学者)を支えるのは、カネを稼ぐ人(商人)であると子供の頃にプレイしたドラクエで学び、
生活すらギリギリになるくらい困窮した経験を持つ彼はひたすらにカネを貯めることに執着するのだけれど、
それでもなお、似非科学をもって商品を売ることは否定し続ける。
このへんのポリシーがすげえなと思うと同時に、鬱陶しくもある。
一緒に仕事をしたくはないタイプだなー。
そんな彼が最後にたどり着いた結論。必見です。
ぜひ読んでみてください。