警視庁捜査一課の堀田班は、宝飾店オーナー殺人事件の容疑者を自供により逮捕。
だが公判では自白強要があったと証言され、翌日、班の刑事の一人が首を吊った姿で見つかる。
そしてさらなる死の連鎖が…。
刑事たちは巨大な闇から仲間を、愛する人を守ることができるのか。
誉田作品史上もっともハードな警察小説。
※物語のラストに触れています。未読の方はご注意を。
誉田哲也史上最もハードな警察小説と銘打たれている。
誉田哲也の警察小説はそれでなくても結構ハードなのだが、
その上でハードだと言われているのだから、よっぽどだろうと思いながらページを開くと、
若い男女が海で戯れるという、何とも牧歌的というか青春的というか、
非常に穏やかな感じのシーンからはじまって、拍子抜けする。
主人公、津原英太。
三つ上の先輩刑事、植草。その妹の遥。遥の友人、チエ。
同期で悪友の小沢はチエに猛アピール中。
津原の二つ下の後輩、守は食事も喉を通らないくらいに遥に恋焦がれている。
皆、特捜一係、堀田班のメンバーである。
まるで家族のようなチームワークを発揮する彼らに、信じられないような悪夢の日々が訪れる。
事件の発端は宝飾店オーナー殺人事件の容疑者を逮捕したこと。
だが、その容疑者は公判で自白を強要されたと証言し、容疑を否認。
なぜか、堀田班のメンバーはすべて所轄にバラバラに異動させられる。
その後、植草が首吊り死体で発見される。
まるで責任をとって自殺をしたかのような形だ。
だが、植草の死は終わりではなく、はじまりだった。
そこから続く、死の連鎖。
守、遥、そして小沢。
あんなに幸せだった日々がまるで嘘のように。
そして、津原は「吊るし屋」と呼ばれるプロの殺し屋と共に、
幸せだった日々をぶち壊した黒幕に復讐するために、ダークサイドに堕ちる。
冒頭のシーンからは想像もできない暗転だ。
どうして津原がそんな目に合わなくてはいけないのか。
刑事であることを捨て、いやもっと言えば、人間であることすら捨てて、
闇の世界で生きていくことを津原が選択せざるを得ない世の中は絶対に間違っている。
もしかしたら、津原は生きていないかもしれない。
生きていたとしても深い闇の中で、もう二度と光を見ずに生きていかなければいけない。
遥が死んだとき、心から愛する女性を護れなかったと知ったとき、
津原はもはや陽の当たる場所を歩いていくことを諦めたのかもしれない。
だが。
そうでなければいいと思う。
どんな形でもいい。
いつかまた、津原が笑えるときがくればいい。
誰もがそう願っている。