「CUT 猟奇犯罪捜査班」 藤堂比奈子 角川書店 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

廃屋で見つかった5人の女性の死体。

そのどれもが身体の一部を切り取られ、激しく損壊していた。

被害者の身元を調べた八王子西署の藤堂比奈子は、彼女たちが若くて色白でストーカーに悩んでいたことを突き止める。

犯人は変質的なつきまとい男か?そんな時、比奈子にストーカー被害を相談していた女性が連れ去られた。

行方を追う比奈子の前に現れた意外な犯人と衝撃の動機とは?


CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)



※物語の結末に触れています。未読の方はご注意を。





この本がシリーズの2作目であることは読み始める前から知っていた。


でもまあ、梗概を読む限りにおいては、


この本から読み始めても特に問題がなさそうな感じだったので、


まあ大丈夫だろと思いながら読み始めた。


(だってウチの店に一作目が置いてなかったから)




大丈夫じゃなかったー。



思いっきり、一作目の犯人がわかっちゃったね?


これが面白かったら一作目に遡って読もうと思っていたのに。


残念極まりないね。



まあ、そうは言っても、わりと一作目も面白そうだから読むんだけどね。




さて。


プロローグはある女性が逆さ吊りにされて殺害されるシーンから始まります。


犯人の正体はわかりません。


このスタートは既定路線というか、よくあるパターンですね。


場面変わって、ヒロインである藤堂比奈子が登場。


一般市民のストーカー相談を受けているのですが……彼女と今川焼のネタで意気投合する女性が現れました。


これは……おそらくこの彼女がプロローグに登場した殺人鬼に狙われるパターンだろうなあと、この時点で予想がつきます。


殺されるか、もしくは比奈子が間に合って助かるか。


どっちにしても一回は絶対に攫われるだろうなあ、と。


で、案の定そうなるわけですけど。



殺人鬼は「幽霊屋敷」と呼ばれる廃屋で、幾人もの女性を殺害していました。


しかも彼女たちが生前、自慢にしていたパーツを死体から奪いとって。



捜査陣も読者である僕も、そのパーツを集めることが目的なのだと思った。


ストーカーから派生した、歪んだ愛情なのだと。



ところが、犯人の狙いはパーツそのものではなく、そのパーツに付随する皮膚。


このあたりは確かに意外であったかも。



犯人の正体については途中でわかった。


ストーカー野郎がそのまま犯人であるはずはさすがにないし、


管理人のほうはどう考えてもフェイク。


であれば、大柄でモデル経験があって容姿にコンプレックスがあって裁縫ができて……と条件がすべてそろっている人物がひどく身近にいることにはすぐ気がつける。


クリーニング屋のおばさん、というあまりにもフツーの景色に溶け込みそうな人物が真犯人であることには結構驚きがあるけれど、


全体的に見て、なんだかどこにでもありそうな話だと思った。


主人公含め、キャラクターに魅力があるからそれで読ませている感じはあるけれど、


事件の猟奇性や女性刑事ものであることなど「ストロベリーナイト」シリーズとの類似点は多く、


それでいて、元祖に勝るものは何もない。


二番煎じと言われても仕方がない無難さ。


パート3もあるようだけれど、このままの路線でいくなら、このシリーズだけにしかない持ち味のようなものがないと苦しいと思う。