古今東西入り乱れ、神出鬼没の法螺試合。若者たちは恋謳い、魑魅魍魎は天翔ける。京都の街に鳴り渡る、伝説復古の大号令。
変幻自在の第二幕、その名も堂々「ホルモー六景」、ここに推参!
※いろいろねたばらしをしていますので未読の方はお読みにならないほうが。
「鴨川(小)ホルモー」
優勝候補筆頭、普通に考えたら弱小・京大青竜会に負けることなんてあり得ない京産大玄武組が完敗を喫しました。
この奇跡の「京都府立植物園ホルモー」の結果は前作「鴨川ホルモー」で書かれていますが、
その敗戦の裏にはまさか、こんな阿呆らしくもいじましい理由があったとは思いもよりませんでした。
恋よりも誓いを重んじた定子。
親友の恋に嫉妬するのではなく、自分もまた前を向こうと決意した彰子。
(紫式部と清少納言は出てこないのですね)
戦いの果てに二人がしっかと抱き合うシーンは思わず涙を誘……わないのですよ、これがまた。
この場面で「ホルモオオオォォォーッ」って。どんだけコメディだっつー話ですよ。
「ローマ風の休日」
楠木さんがあっさりと解いてみせた数学パズル。
僕だって知ってましたよ、この問題。たまたまですけども。
京都とローマはどちらも歴史の重みを感じることができる美しき古都ですが、
京都にオードリー・ヘップバーンは似合いませんね。
この街に似合うのは…やっぱり楠木ふみ嬢でしょう。
「もっちゃん」
うわ、ずるいなあ。やられたよ。
読了後の僕の感想はこれでした。
まさかこんなところで…そんな仕掛けが待っているとは思いませんでしたもの。
積み重ねた本の上にレモン? それってどこかで読んだような…?
そんな既読感を無視して読み進めると、さらなる疑問が。
安倍君が「女性の鼻の美しさ」に惹かれる男であるというのは、
前作「鴨川ホルモー」の読者であれば、誰でも知っていることです。
(っても、この安倍君はあの安倍君ではないのですが)
となれば、彼が手に取った本が、あの作品であることは間違いないでしょう。
ん…? 三、四年前に出た本?
だって…それっておかしくない?
まさかねえ。そんな仕掛けがあるとはねえ。
何と言うか、本当にやられたよという気持ちになりましたよ。
「同志社大学黄竜陣」
他の作品のエピソードとか登場人物を小道具として上手に使って、物語を演出するのは、
たとえば伊坂幸太郎さんの得意技です。
でも、万城目学さんもなかなかお見事でございましたよ。
芦屋満というのは確かにいけ好かない奴だけど、
安倍くんが失恋したのは別段、芦屋のせいじゃないし、
そもそも恋愛なんて何したってアリだし。
そんな風に思っていたのですが、
芦屋は僕が想像していたよりもはるかに、しょうもない男でした。
「鴨川ホルモー」を読んでいたときは、
芦屋の元彼女のことを「未練がましい面倒くさい女だ」と思っていたけれど、これは撤回します。
ゴメン、巴ちゃん。
伸ばすのかよ、ホルモー。
「丸の内サミット」
ううむ。どんな偶然ですか、これは。
そんなことより、ホルモーって東京でも行われていたんですか。
待ってくださいよ。じゃあ、もしかしたら日本中で行われているってこともあり得るんですか。
ううむ。由々しき問題ですよ、これは。
千年の古都、京都だから魑魅魍魎が跋扈しても何となく許せる気がしてたのに。
丸の内のオフィス街に響き渡る、ホルモーの声。
ううん、やっぱり似合わないなあ。
「長持の恋」
芥川龍之介、梶井基次郎、クラーク博士に新島襄。
有名人をこれでもかとばかりに起用してきたこの短編集ですが。とうとう織田信長まで登場しました。
高村は真面目で優しくていい奴だから、
性格的なことを考えたら、別段、彼女ができたって不思議はないと思います。
でもね…ちょんまげですよ、ちょんまげ。
どんなにいい奴だってちょんまげとは付き合いたいとは思わないなあ、僕だったら。
だから、「鴨川ホルモー」のエピローグで高村に恋人ができたという話を読んだときは、
ちょっと驚いたりもしたけれど…。
ま、四百年以上も前からの恋なら、仕方ないかって思えますね。