調査会社スマ・リサーチが併設する探偵学校スマPIスクールに、笑わぬ美少女・紗崎玲奈が入校する。
探偵のすべてを知りたい、しかし探偵にはなりたくない、という玲奈、なぜ彼女は探偵学校に入校したのか?
スマ・リサーチの社長・須磨康臣は、彼女の驚くべき過去をつきとめる。
須磨は玲奈の希望を鑑み「対探偵課」を設けた。
紗崎玲奈はひとり、悪徳探偵を追う“対探偵課探偵”となった。
ミステリでもいい、ハードボイルドでもいい、サスペンスでもいい。
いずれにせよ、小説の中に登場する探偵は、たいていの場合、正義の味方として描かれている。
中には一風変わった探偵もいて、素直に正義の味方と呼びたくない場合もあるけれど、
それでも明確に「悪」の側に回っているケースというのはあまりない。
(ないわけじゃないけれど)
しかし。
現実はそうはいかない。
現実の探偵は殺人事件を解決したりはしない。
彼らの仕事は主に人探しや身上調査。
いや、もちろんそれだって悪いことではない。
人様の役に立つ仕事であることも確かだろう。
ただし、理由があって見つかりたくない人を無理に探そうとしなければ、だ。
この小説の中で、玲奈が探し求める探偵は、
かつてストーカー被害に遭い、逃げるために引っ越しをした玲奈の妹の所在を、そのストーカーに教えた人物だ。
その探偵は「依頼された仕事を行うのは当然」と言うだろう。
だが、結果として玲奈の妹はストーカーに殺害された。
その探偵はストーカーがどれだけ危険な人物かわかっていながら調査に応じた。
世界のルールを守らず、金のためなら何でもするような探偵を狩る。
そして、妹を殺した探偵を見つけ出す。
だから、「探偵の探偵」なのだ。
「万能鑑定士Q」シリーズなどでも顕著な岡圭祐お得意の雑学トリックなどは時々入るが、
基本的にはミステリ的な要素はほとんど無いと言っていい。
玲奈に理屈は要らない。
玲奈は汚い手を使うことも、暴力をふるうことも、犯罪に手を染めることも一切躊躇しない。
目指す相手を叩き潰すためには手段を選ばない。
そういう、理屈が通用しない物語は基本的には好きではないし、
玲奈があまりにも不死身過ぎるのもどうかと思うし、
有無を言わせない暴力の連続にも辟易とする。
いわゆるアクション映画のような爽快感は一切なく、ただ、あるのは悲愴感だけだ。
だが。
それでも、玲奈の目的は果たさせてやりたいと、そう思う。
どうか。
玲奈がいつかまた笑える日がくるように。
そのときまで、玲奈の命が尽きることがないように。
ただ、それを願うしかない。