「お前たちは島から生きて出られない」
廃墟の島「矢郷島」でのロケ中、突如送られてきた動画メール。
「5年後の未来」にいるという「包帯男」が、ロケ参加者9名が皆殺しにされると予言する。
やがてその言葉通り、出演者、スタッフが次々と殺されていく。
誰が殺しているのか。なぜ殺されるのか。一体この島で何が起きているのか。
息つく暇もない展開、予想だにしない衝撃の結末。異色ホラーミステリ。
「とりあえず、ねたばらしがありますよってことを断っておいて、と。
さて、感想だけれども」
「どう評価すべきか……とても難しいよ」
「これを本格ミステリとして読んだら、評価は相当低いよな」
「廃墟の島、クローズドサークルでの連続殺人っていう道具立ては本格ミステリのそれなんだけどね」
「ストーリーの中心にSF的要素があるからなあ。
未來から届くメール、時間と空間を飛び越えて物質が届くワームホールみたいな池。
これらの存在が現実にあるものとした前提で成り立っているからさ」
「最後の最後にさ、これらSF的要素が実はこんなトリックでした、ってなったらすごかったんだけど」
「まあ……さすがにそこまでを期待してたわけじゃないけれど。
そこに論理的かつ説得力のある解決が存在していたら、名作と呼べるミステリになったかもな」
「SF的要素が存在するという前提でも面白いミステリはいくらもあるけどね。
西澤保彦さんとか……駄作も多いけれど、名作だっていくつもある」
「この物語がそれに値するかと言えば……」
「そこまでじゃないよね」
「ああ。とは言え、設定そのものは悪くないんだよな。
かつて金鉱山として栄え、労働者のための集合団地がつくられ、それが廃墟と化している島。
他には存在しない、奇妙なムラ社会がかつて形成されていた島。
そこを、廃墟ロケのためにテレビクルーやタレントが訪れる。そこにはその島の出身者が混じっている」
「冒頭から主人公の携帯に動画がメールされてきて、この島で彼ら9人は全員死ぬと予告される。
予告じゃない、未来からの忠告だと」
「そこまではいいよなー。ドキドキワクワクする」
「そこから連続殺人が起こるんだけど……筆力がついていってないのが残念」
「ああ。なんか文体が軽いんだよな。まったくもってサスペンス性にかける」
「ラストで、それぞれ全員が青葉まゆにコントロールされていたことがわかるよね。
だから、連続して人が死んでいても皆『自分は大丈夫』と思っていたために緊迫感がなかったというのは考えられるけど……」
「そういう理由で緊迫感がないのか、ただ単に筆力が無いのかがわからないところが残念」
「いや、ホントにいろいろ惜しいんだよね。ちょっとずつ足りない感じ」
「時間島(と言うより矢郷島団地か)の設定が活かしきれていないのが一番残念かなあ。
巧く書けば絶対にもっと面白いはず!」
「だよねえ」