「パワード・スーツ」 遠藤武文 講談社 ★☆  | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

超高齢化社会の日本で、老人介護のために開発された「パワードスーツ」。

手足に装着するだけで途轍もない力を発揮する新型機器だが、その陰で次々と老人が失踪。

さらに殺人事件も発生し、現場にはなぜかパワードスーツの付属品が残されていた!超絶の発想と展開で読み手を見事に騙す、乱歩賞作家の快作。


パワードスーツ (講談社文庫)



面白いと思って読んだ人がいたら大変もうしわけないのですが、



僕は、びっくりするくらい、つまらなかった



あくまで個人の感想です。




つまらなかったからってわけじゃないですが、遠慮なくねたばらしします。未読の方はご注意を。




まず、何がつまらないって。


パワード・スーツ、カンケーねー!!!


ってことですね。


タイトルにも使われているのに、


パワード・スーツもアーマード・スーツも完全に脇役というか…ただの小道具。


物語の本筋と何の関係もない。


パワード・スーツという架空のメカが存在するという前提で、


それを巧く利用した物理トリック(または心理トリック)を期待していたんだけれども……。


まさかパワード・スーツの用途が警察の庁舎をぶっ壊すだけとは。


何のために……パワード・スーツなんてものをわざわざ考え出したのか……。




それから。


高齢化、色覚特性者、引きこもり、医療問題など、いろいろな社会問題を作中に取り込んでいますが、


盛り込み過ぎて散漫になり、どれもぼんやりした印象しか残りません。


結局、社会風刺がしたかったのか、ただ単にミステリが書きたかったのか、


近未来を舞台にしたからそこがどんな社会なのかをいやいやながら描写しただけなのか。


作者の意図がまったく見えませんでした。





それから。


帯に「あなたはこの仕掛けを見破れるか!?」って書いてあるんだけどね、


いやそんな……今さらただの叙述トリックをドヤ顔で出されても。


「見破れるか!?」って言われても……見破れますがな、こんなシンプルな叙述トリック。


新しい工夫も何にもないんだもの。




それから。


色覚異常っていう、せっかく魅力的な設定を持ってきたのに、それが全然活かされていない。


どんなふうにトリックに盛り込んでくるのかなって楽しみにしていたのだけれど……。


そもそも、緑と茶色が識別できない色覚異常だって自認している人がさあ、


隠蔽工作としてそんな手段を採るとは思えないのだよ、フツー。



トリックにしても、社会風刺にしても、小道具の使い方にしても、すべてが雑


思いついたことをとりあえず、全部順番に書いてみました、みたいな。



お金を払って本を買った読者を満足させようという意図はまったく見えず、


ただの自己満足でしかないように感じます。



って言うかね、作者本人もこれ満足しているのかな?


ひょっとして作者も、こういうのが書きたかったんじゃないんだけどなーとか思ってない?