誰もが振り向くような自慢の恋人をエリート医師に奪われてしまった省吾。
あることからこの医師が彼女を殺してしまうと「知った」彼は、すべてを投げうって奔走する。
そんな省吾の「執着」に周囲の人間は呆れ、次第に離れていってしまうのだが……。
やがて、事態は思いも寄らない方向へ転じていく。
痛々しいほど真っ直ぐな気持ちだからこそ、つかむことのできた「真実」とは。
主人公はいたって真面目だし、完璧にナイトのつもり。
主人公視点で物語を見ている読者も同様。
省吾に悪気がないのはよくわかっているし、真剣なのも知っているから、
それを理解しようとしない周りの連中に対して「なんだよこのやろー」とか思ってしまう。
でも、どう考えても、端から見たら完璧なストーカー。
僕だって周りにこんなヤツがいたらぶっ飛ばしてでも止めるし、
友人ならば何とか正気になってほしいと思うに違いない。
そのイライラ感とギャップが面白い。
残念なのは省吾が必死に守ろうとしている彼女がまったくもって魅力的でないところ。
ただ美人だというだけで性格は典型的な姫。
なんでこんな子のためにアルバイトもバンド活動もすっぽかして……と誰でも思うはず。
でもなあ、彼氏がいるのにもっと条件の良い男のほうに簡単に転ぶような子でないと、
物語そのものが成り立たないし……
男なんて見た目がいいってことだけで十分、その子を愛する理由になってしまうんだな、これが。
誰でも覚えがあるはず(笑)
そして物語はかなり意外なところに着地をする。
動機そのものは特に目新しいものではないけれど、伏線もしっかり張ってあるし、物語が破綻していない。
タイトルの意味は最後にわかるが、その部分をいい話にしようとし過ぎて若干強引さが出てしまい失敗している感があるけれど、それなりによくまとまっていると思った。
あっと驚くような意外性には欠けるものの、先の読めない面白さがあって飽きずに進んでいける。
十分に堪能できた。