卒業式を翌日に控えた高校で、突如として発生した学校ジャック事件。武器を片手に生徒を人質にとったのは普段は目立たない中年の女教師。
彼女の周到な計画と、驚くべき戦闘力は警察をも翻弄する。焦燥し混乱する外部の人たちをよそに、一人また一人と犠牲者が…。
クラスの生徒全員が大人顔負けの極悪人。
そのクラスの女教師はたった一人の娘の命を奪った暴走族に復讐をするとともに、
クラスの生徒たちをも粛清していく。
学校はもはや安全な場所ではない。
この言葉が作者の創作意欲を刺激したそうである。
確かに、それはひとつの事実だろう。
昔では考えられなかった種類の事件や犯罪が学校では起きている。
本作のクラスは、それを思いっきり誇張して表現した姿だろうと思う。
この小説が現在の学校に対する警鐘であるならば、
もはや人は学校に何一つ期待をしてはいけないような気すらする。
だが僕はそんなことはないと思うし、思いたいのだ。
何年か前に中学のときのクラス会があった。
担任の先生も参加されており、僕は先生にこんな質問をした。
「最近は携帯電話なんか中学生も皆持ってるし、授業中にメールしたりしてるんじゃないですか? 先生の言うことなんか聞かないんじゃないですか?」
しかし、先生の答えは意外なものだった。
「そんなことないよ。今の生徒だってあんたたちが中学生のときと一緒だよ。びっくりするような悪いことする子なんかいなくって、みんな、そこそこ悪いし、そこそこいい子だよ」
僕はこの言葉を聞いて嬉しかった。
だから…いつの時代も子供なんてたいして違いはないんだって信じている。
この小説のように誇張された世界がやってくるなんて思わない。
それはあまりにもお人好しで無防備な考え方なのかもしれないけれど、それでもいいやと思っている。
それに、僕は本作に登場する先生のやり方を是としたくない。
何の罪もない人が面白半分の悪意に晒され、傷つき、命を落としたとしても、被害者なら何をやっても許されるものではないと思う。
心情的には理解できるけれど、それを許したら世界は崩壊する。
自分が同じ立場になったとき、この奇麗事をまだ口にできるかどうかはわからないけど、
できればそういう人間でありたいとは思う。