「二度のお別れ」 黒川博行 東京創元社 ★★★ | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

四月一日午前十一時半、三協銀行新大阪支店に強盗が侵入。

四百万円を奪い、客の一人をピストルで撃った後、彼を人質にして逃走した。

大阪府警捜査一課は即刻捜査を開始するが、強奪金額に不服な犯人は人質の身代金として一億円を要求、かくして犯人と捜査陣の知恵比べが始まる。

「大阪府警捜査一課」連作第一弾。



二度のお別れ (創元推理文庫)




ちょっと古い話題だけれど、


黒川博行さん、直木賞受賞おめでとうございます。




僕は今回は貫井徳郎さんだと思っていたのですけどね。


正直、直木賞の予想、ただの一度も当たったことがありません。


僕に受賞予想された作家さんは、おそらくその時点で諦めたほうがいいかと(笑)




さて、黒川博行さんですが。


本作は黒川博行くさんの代表作「黒マメコンビ」の第一作です。




誘拐というのは割に合わない。


なぜなら、未だかつて身代金を手にいれ、なおかつ逮捕もされなかった営利誘拐の犯人はほとんど存在しないからだ。


誘拐はほぼ100パーセントに近い確率で失敗する。


もっとも、僕個人としては、警察に届け出なかったケースというのがあるような気がしているのだが。

(事後においても報復などを恐れて)


いずれにせよ、警察が介入してなおかつ成功した誘拐事件というのはないということだ。


だが、本作ではその営利誘拐が見事に成功する。


身代金はあっさりと奪われるし、人質ももちろん生きては帰ってこない。


犯人側の完全勝利という図式だ。


狂言誘拐であるという可能性を、一部の刑事を除いてまったく検討してみないお間抜けな警察では致し方ないというところか。


しかし、本作での犯人は果たして誘拐を成功させたと言えるのだろうか。


確かに身代金の一億円は得た。


逮捕もされなかった。


だけど…それで失ったものは大きすぎたのではないだろうか。


誘拐は割に合わない。


やはりこの定説に間違いはないようだ。