フリーターの秋川瑞希は、テレビプロデューサーの叔母から、霊能力者・エステラの通訳兼世話役を押しつけられる。
嫌々ながら向かったロケ現場。
エステラの透視通り、廃ビルから男性のミイラ化した死体が発見された!
ヤラセ? それとも…。
さらに、生放送中のスタジオに殺人犯がやって来るとの透視が!
行方不明になった家族を霊能力で探すという、
ありがちだけれど成功したところを一度も見たことがないスペシャル番組。
この場合、霊能力というのは、世間一般から広く情報を集めるための看板であって、
誰も霊能力で人が見つかるなんて思っているわけではないと僕は信じているのだが。
海外では実際それで人が見つかった例もあるのかもしれないけれど、
まあ、下手な鉄砲だって数うちゃ当たるよね。
とはいえ、この小説の中の霊能力者はどうやらホンモノみたいで、
小説の語り手である瑞季は霊能力嫌いなのにプロデューサーである叔母から通訳を依頼され、
戸惑いながらも番組に参加していくことになる。
その番組のロケ、それからスタジオでの生放送と、
中国人の兄妹が密入国して日本に出稼ぎにきたお話の二つが同時並行で語られていく。
まったく関連性のない二つのストーリーがどうやって結びつくのか。
この作品の眼目はそこにあると言ってもいいだろう。
基本的にはそれを楽しみに物語を読み進めるのが正しい姿勢だ。
ところが、その結びつきとは別に、驚くべき方向から意外な真実が飛び出してくる。
エステラの思わせぶりなセリフなど、伏線がなかったわけではないにせよ、
これは多くの読者にとって「想像の斜め上」というやつだろう。
その結果、シリアスな展開が急にコミカルになってしまうという弊害はあるにせよ、
(さらに霊能力否定派にはちょっと受け入れ難いオチかもしれないが)
意外性という意味ではかなりのものだと思う。