「MIST」 池井戸潤 双葉社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

標高五百メートル、のどかで風光明媚な高原の町・紫野で、一人の経営者が遺体となって発見された。

自殺か、他殺か。難航する捜査を嘲笑うように、第二、第三の事件が続けざまに起きる。

その遺体はみな、鋭く喉を掻き切られ、殺人犯の存在を雄弁に物語っていた。

”霧”のようにつかめぬ犯人に、紫野でただ一人の警察官・上松五郎が挑む。

東京の事件との奇妙な符号に気づく五郎。そして見えてきた驚くべき真相とは。


MIST (双葉文庫)



未読の作家さんで面白い作品に出会うと、ひたすらそのヒトばかり読んでしまうクセがある。


凝り性なのである。


まあ、特筆すべきことではなく、読書好きにはわりと多いハナシなのだが。




で、一時期(と言ってもずいぶんと前のことだが)池井戸潤さんにハマっていた。


ちょうと、「下町ロケット」で直木賞を受賞されたころ。



貪るように、全著作を買い集めて読んだ。



ほとんどは自店に在庫があったのでいわゆる「大人買い」をしたが、


唯一無かったのが、この「MIST」だ。


ちょうどそのころに臨店した双葉社の担当営業さんN氏(飲みトモダチ)に、


「Nさん、どうしてウチの棚に置いてないのさ。ちゃんと補充しておいてよー!」


と半ば冗談混じりに文句を言ったら、


「んー。でもこれは他の作品と毛色がちょっと違って、わりとミステリ小説ですよ」


「わりとミステリ」というのもあまり聞かない日本語だねと思いながら、


「まあ、いいよ。とにかく出てる本は全部読みたいんだから。入れておいてくださいよ」


「ありがとうございます……でもあまり期待はしないほうがいいかもしれないですよ?」



……このブログでも何度か書いているが、


どうして書店営業さんというのはこう正直なのか(笑)




まあ、実際のところ、N氏の意見は正しかったんですけどね。


資金繰りに悩む会社経営者が登場したりするあたり池井戸色が出ているけれど、


それ以外は本当によくあるサスペンスタッチのミステリ。



登場人物がやたら多く、しかもそのほとんどが無意味。


ただ単に殺されるためだけに出てきたような人物も。



犯人についても、怪しい人物が怪しすぎて、逆に怪しくない(笑)



真犯人が存在感無さ過ぎて、真相が明らかになったときにも、


「あ、コイツなの?」というくらいの印象しか受けなかった。


バタバタッと解決になだれ込む感じで驚くヒマもないという。


少しだけ触れていた犯人の生い立ちなんかにももう少し踏み込んだほうがよかったのでは。



結論。


池井戸潤さんは銀行小説か企業小説だけ書いていてください。