「殺意の構図」 深木章子 光文社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

複雑に絡み合う連続不審死。真の殺意はどこにあるのか。

峰岸諒一は義父宅に放火、殺害した容疑で逮捕されたが否認を続けている。
そんななか、諒一の妻が水死した。すると諒一は「妻が亡くなった以上、秘密を守る必要はなくなりました」と真実を告げ始める。
元弁護士の著者によるミステリ。


殺意の構図 探偵の依頼人



第1章では弁護士の視点から、とある事件の全貌が語られる。


借金に苦しむ男に、資産家である妻の父親を放火により殺害したという容疑がかけられている。


その男、峰岸諒一の容疑は読者から見ればまず間違いないものに思える。


ところが彼には第一審で無罪判決が出る。


ひたすら潔白を訴えていた彼は、妻の朱実の事故死をきっかけに鉄壁のアリバイを主張し始めたのだ。

(ちなみに、朱実は別荘の地下室で溺死する。

 エレベータで降りて行ったら地下室が水で一杯になっていたという不可解な死だ。

 僕なら絶対に避けたいという死に方だなあ)




続いて、第2章「女たちの情景」では、朱実の妹の暮葉ら周辺人物の視点から、


事件の真相に対する仮説や推理が語られていく。



で、いよいよ第3章では真相が語られるのだが、


ここで真相が二転三転したり、


最後のエピローグで意外な人物(そうでもないか…)の正体が明らかになったり、


まあ、いろいろとミステリのお約束が仕込まれているのである。



印象としては、文体が古臭いということもあって、


ヒジョーに真面目に書かれた教科書的なミステリだなということ。


つまらなくはないし、ある一定の水準は超えていると思うけれど、


それ以上のモノは何もない。



事件のあらすじを時系列に語っていくだけの、何の工夫もないミステリに時々出会う。


この作品はそうではなくて、ちゃんと演出が入っているにも関わらず、


それらの作品と同じような印象を受ける。


なんでだろうね?