「科学探偵Mr.キュリー」 喜多喜久 中央公論新社 ★★★☆ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

構内に掘られた穴から見つかった化学式の暗号、教授の髪の毛が突然燃える人体発火、ホメオパシーでの画期的な癌治療、更にはクロロホルムを使った暴行など、大学で日々起こる不可思議な事件。

この解決に一役かったのは、大学随一の秀才にして、化学オタク(?)沖野春彦准教授―通称Mr.キュリー。

彼が解き明かす事件の真相とは…!?



化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)



頭脳明晰で論理的でクールな大学の准教授。


寡黙で面倒くさがり屋。



一方、ワトソン役は好奇心旺盛で、少し暴走気味なところもあるけれど正義感溢れるまっすぐな女性。





この説明文から思い浮かべる小説と言えば、


おそらく10人中9人くらいが、


東野圭吾さんの「ガリレオシリーズ」


ではないかなあ。



このコンビはなあ……どう考えても、ガリレオ先生と内海薫だよなあ。

(小説ではなく、ドラマの方の)



ただ、誤解してほしくないのは、


この短編集はガリレオシリーズの劣化版ではないということ。



小説を書くということにおいて、


東野圭吾さんほどの熟練度がないから、


比べれば、そりゃ間違いなくガリレオシリーズに軍配は上がる。



でも本作だって決してつまらないわけではない。


ライトな感覚で楽しめる仕上がりにはなっていると思う。



そういう意味で言えば、劣化版というよりは簡易版というほうがあっているかも。


トリックもガリレオシリーズよりもシンプルだし、わかりやすい。


人間関係も最低限にまとめられていて簡潔明瞭。


これがほめ言葉になるのかどうか微妙なところだけれど、


(僕自身もほめているんだかどうだかよくわからなくなってきたけれど)


読みやすいのは長所だろう。



ただし、ガリレオに対抗したんだかなんだか、キュリーというニックネームは、


あまりにもイケてないと思うのだがどうか。