「二枚舌は極楽へ行く」 蒼井上鷹 双葉社 ★ | 水底の本棚

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妻を事故で亡くした夫が、事故前夜一緒だった友人達の一人に妻の死の原因があるとひとり合点。謎の飲み物を飲ませて自白を強要する「野菜ジュースにソースを二滴」などミステリ12編。


二枚舌は極楽へ行く (双葉文庫)



どんだけ上から目線だと非難されようとも、とりあえず言う。



一生懸命、書いていることだけは伝わってきました。


それはいいと思います。


でも、じゃあ、どこが面白かったかと訊かれると、誉めるところがひとつもないのです…。


デビュー作の短編集「九杯目には早すぎる」はわりと面白かったです。


荒削りだけど、これからを期待してもいい作家がまた出てきたのかなと思ったのを覚えています。


しかし、次作の長編「出られない五人」を読んで「あれ?」と思いました。ミステリとはほど遠い、ただのドタバタ劇だったからです。


でも、本作は改めて期待感を持って読んでみました。

もしかしたら蒼井上鷹は短編の名手なのかもしれないから。

…しかし、僕の期待は無残に打ち砕かれました。


何が面白いのかまったくわかりません。たとえば「青空に黒雲ひとつ」


※ここからねたばらし感想です。それと罵詈雑言。




ケアレスとしか言いようがないミスが二箇所もあるのには敢えて目をつぶりましょう。


著者も編集者もだらしがないとは思いますが、誰にでもミスはあるものですし。

でも、本筋にあまりにも無理がありすぎませんか?


祖母から何とか事業資金の援助を引き出したい孫娘の弄した策が、


闖入してきた泥棒を祖母に正当防衛で殺害させ(たと思わせ)、


それを隠蔽してあげることで貸しを作ろうというもの。


ツッコミどころ満載でどこからツッコミを入れたらいいか迷うけれど、


まず、そもそもおかしいのが


「泥棒が逃げようとして本棚をひっくり返して下敷きになった」というシチュエーション。



どんな本棚ですか、それ。


どうやってぶつかったら本棚が自分の方に引っくり返るの?


それと、そのシチュエーションがあり得るなら、


泥棒は芝居じゃなくて本当に死んじゃうじゃん


少なくとも大怪我はするでしょう。


重たい本棚の下敷きになっても死なないような仕掛けか何かがあったのだろうか?


 あったならそれは書いておいて欲しいなあ。


今回はうまい具合にホームヘルパーさんがそれを発見して、


善意の第三者の証言と協力が得られたけれど、そうでなかったらどうしたのでしょうか。


お婆さんが気絶している間に孫娘が一人で全部片付けましたって、リアリティないでしょ。

ホームヘルパーさんはその死体を運搬したわけですが、


それが本物の死体でないとどうして気がつかないの?


体温を下げるとか脈を止めるとか息を止めるとかそういう仕掛けがあったのかな?


あったのならそれは書いておいてよ。

第一、オチがあまりにもどうでもいいものになっていますよ。


誘拐犯がバラまいたお金ってところは結局どうでもいいのなら、


何もそんな設定にする必要ないでしょうに。


この作家さんは変人を描くのがうまいし、せっかくだから、


日本一のバカミス作家を目指してみるというのはどうでしょう。

(ライバルは蘇部健一か)


この作品もバカミスとしか思えないくだらなさだし、


他にも「携帯電話のバイブ機能でくすぐって首吊りをさせる」なんていう


バカミスすれすれのトリックも使っていることだし。



それしかこの作者の生きる道はないような気がするなあ。