「ワールドカップ戦記」 スポーツ・グラフィックナンバー・編 文芸春秋  ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

ナンバー誌でたどるサッカー日本代表の軌跡。



ワールドカップ戦記: 飛翔編 1994-2002 (文春文庫)

ワールドカップ戦記 波濤編 2002-2010 (文春文庫)






必ず買っている雑誌というのは、基本的にない。



特集によって男性誌、ビジネス誌、スポーツ誌、総合情報誌などを買っている。


唯一の例外が「Number」


毎号必ず買うというわけではないが、サッカーや野球の特集であればたいていは買うし、それ以外のスポーツでも興味を持てれば買う。


だから、ここに編まれている文章はたいてい読んでいるはずなのだ。



でも、こうやって記事で日本のサッカー史をたどるのは面白いし興味深いと思う。



いわゆる「ドーハの悲劇」があったアメリカワールドカップ予選。


はじめて世界に挑戦し、3戦全敗という結果に終わったフランスワールドカップ。


自国開催でベスト16に進出した日韓ワールドカップ。


史上最強と言われたメンバーで挑み、惨敗に終わったドイツワールドカップ。


そして、なりふり構わぬ戦いぶりで意地のベスト16進出を勝ち取った南アフリカワールドカップ。



ページを繰っていくと、まるでそれらが全部昨日のことのようによみがえってくる。



呆然。痛み。歓喜。絶望。驚愕。


それらの感情を何度でも呼び起こしてくれる。



サッカーは野球と違って文章化するのがとても難しいスポーツだ。


たとえば、田中将大投手のピッチングがどれほど素晴らしいものかを文章化するのはたやすい。

彼のストレートも、スライダーもいくらでも表現する術(すべ)がある。


しかし、メッシのファンタジー溢れるドリブルを文章で表現するのは不可能だ。

その凄さの十分の一でも伝われば上出来だろう。


これはそれぞれのスポーツの質の違いというものだ。

野球が持つ空気とサッカーが持つ空気は、まったく違う。



そういうスポーツであるにも関わらず、本書を読めば鮮やかにその情景が、そのときの感情が、記憶が、よみがえってくる。


来年、また四年に一度の世界最大の祭がやってくる。

今度の舞台はブラジル。


わが日本代表の戦いを待つ間、ぜひ本書で僕たちの代表チームの歴史を読み返してみてはいかがだろうか。