今年もクリスマスイブが近づいて、恒例のサンタクロース会議が開かれたが、今年は会長勇退の年であり、副会長が新会長に選任され、会長が担当していたアメリカ支部の後任が紹介された。
新たに加わることになったサンタは女性。女性サンタを認めるかどうかで、会議は大騒ぎになる。
メリークリスマス。
ということで、クリスマスにまつわる一冊。
クリスマスでまず最初に思いつくのは、やっぱりディケンズの「クリスマス・キャロル」ですよね。
書店ではクリスマスの定番です。
新潮文庫の「クリスマス・キャロル」はこの時期、どこの書店でも平積みされているのではないかな?
それをうっかり下げ忘れて、お正月になっても平積まれたまま…なんていうのは、書店あるあるです。
それから、O・ヘンリの「賢者の贈り物」あたりも定番かな。
僕はこっちのほうが好きです。
でも、今回とりあげたのは、東野圭吾さんの「サンタのおばさん」です。
※ここから、ねたばらし感想です。
「片想い」という長編の作中に、この「サンタのおばさん」は劇として登場します。
その劇のオチは、
「サンタのおばさんはクリスマスにはプレゼントを配れなかったのさ。なぜなら彼女は当日、生理になってしまったんだ」
として書かれています。
強烈な皮肉ですね。
ただし、東野圭吾さんが言いたいのは「所詮、女にサンタなんて無理なんだよ」ということではなくて、現代社会と現実に対する皮肉。
これ、男性がきいても、女性がきいても、耳の痛い話だと思います。
一方、この童話のほうは性差別を越えて「サンタが女性でもいいじゃないか」というハッピーエンドを迎えます。
とても暖かい気持ちになれますよね。
読んだひとの心にぽっと小さな灯をともすのは、この一言。
「サンタに応募したと聞いた時にはびっくりしました。
だからあたしはトミーにいったんです。
サンタは男の人しかできないのよ、どこの家だって、サンタ役をしているのはお父さんでしょって。
そうしたら彼はあたしにいいました。
ママはパパの分まで僕を愛してくれているんじゃなかったの、そう約束したじゃないかって。珍しく怒った顔をして。
あたし、何もいい返せませんでした」