「幽霊列車」 赤川次郎 文藝春秋 ★★★★ | 水底の本棚

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本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

山間の温泉町へ向かう列車から八人の乗客が消えた。前代未聞の難事件に取り組んだ警視庁捜査一課の鬼警部は聞込の先々で推理マニアの女子大生と出っくわす。

そのうち、いつしか二人は名コンビとなる。
二人のコンビが出会った五つの事件。著者デビューの連作推理第一弾。



幽霊列車 (文春文庫 あ 1-2)



読書好き男子が中学生か小学生のときに必ず通る道。

それは、赤川次郎さんと星新一さんだと思います。


あくまで僕の世代のハナシなので、今はどうだかわかりませんが。


僕も御多分に漏れず、中学時代には両方にハマりました。

おそらく、そのころ刊行されていたお二人の著作はすべて読んでしまったのではなかったかなあ。

(乏しいお小遣いでは単行本には手が出なかったので、文庫に限ります)


あるときを境に熱病から醒めたように、急に読まなくなりましたが。


星新一さんは熱中し過ぎて飽きただけなので、また大人になってから読み返したりもしていますが、赤川次郎さんについては単純に面白くなくなったからやめました。


でも、この頃の赤川次郎さんは読めたなあ…。


いまだにこのシリーズ、出ているのかどうかは知りませんが、シリーズものってワンパターンでいつまでも書き続けられるから楽ですよね。

(そういう安易な方向に走るから堕落するんだっつーの)

…という愚痴はさておき、本作の感想ですね。

ねたばらしを含みますのでご了承を。


「凍りついた太陽」はアンファン・テリブルですね。

大型冷蔵庫で凍死した被害者を手押し車に乗せて、陽当たりの良いところまで運び解凍する、という普通の大人では考えつかない事件。

「Yの悲劇」にも通じる子供の無知が招いた謎。ちょっとゾッとしますよね。


もうひとつのお気に入りは「善人村の村祭り」
旅人にこれ以上ないくらいに親切にする。死刑を目前にした囚人の望みを何でも叶えてやるかのように!
夕子が言います。

「善意の固まりなんていう人間は、いやしないわ。不自然なのよ(後略)」

まさに言い得て妙、ですね。