時々物思いにふける癖のあるユニークな猫、ホームズ。
血、アルコール、女性と三拍子そろって苦手な独身刑事、片山義太郎。
ある女子大での売春事件の捜査のため、女子寮に乗り込むことになった片山は学長の密室殺人、女子大生連続殺人事件に巻き込まれ、そこで後に愛猫となるホームズと出逢う。
「三毛猫ホームズ」シリーズ第一弾。
僕が中学生の頃、最も数多く読んだ推理作家というのが、おそらくこの赤川次郎さんでしょう。
典型的なミステリ好き中学生ですね。
今も中学生たちは赤川次郎さんに夢中になっているのでしょうか。
まあ、赤川次郎さんもこの当時は今ほどにひどい文章も書いていなかったし、内容もそれほど低レベルではなかったので楽しく読んでいました。
本作は本格ミステリとしても十分に面白い。
意外なトリック、意外な犯人。そして頭脳明晰な(?)名探偵とちょっと間抜けな助手。
助手と美女の切ないロマンスもあったりして、読み応えは十分です。
ミステリの面白さをすべて含んでいて、ミステリの入門編としては最適かもしれません。
ラストは結構ヘビーでシリアスなのですが、それでも「ユーモアミステリ」という分野の先駆けとなったシリーズだけあって、物語全体を包むテイストが優しく柔らかいので、後味も苦くなりません。
※以下、ねたばらしを含みます。
プレハブ小屋そのものを凶器にするという大胆なトリックは、なかなか意外性もあって良かったと思います。
(殴打されたのと撃墜死の区別がつかないってのはもしかしたらヘンな話なのかもしれませんが)
また、犯人も意外性のある人物。
ここから片山が毎回美女に言い寄られ、そして悲しいエンディングを迎える、というパターンが定着し飽き飽きさせられるのですが、
これは第一作ですからなかなか意外性のある展開だなあ、と感心しながら読んでいました。
女子大生連続殺人、そして晴美の不倫相手の方も、その犯人は意外性たっぷりで悲劇的なエンディング。
再読しようとはあまり思いませんが、きっと自分にとって一生忘れられない作品なんだろうなあ。