「リカ」 五十嵐貴久 幻冬舎 ★★★ | 水底の本棚

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妻子を愛する42歳の平凡な会社員本間は、出来心で始めた出会い系サイトで「リカ」と名乗る女性と知り合う。

しかし彼女は、恐るべき怪物だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。

その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。第二回ホラーサスペンス大賞受賞。



リカ (幻冬舎文庫)



勘弁してくれよ。
これが読了後の素直な感想である。


最初は本間にとって都合の良さそうな、しかも彼好みの女性のように思えたリカ。

しかし彼女は恐るべき怪物で、その常軌を逸した正体を徐々に顕わにしてくる。

本間が気がついたときはもう既に手遅れだった。

単行本では未発表だったエピローグが追加されたことで本作は凄みを増した

僕は単行本時に読んでいるわけではないが、ホラーサスペンスとしての恐怖感は間違いなくレベルアップしたと言っていいと思う。

僕は痛い話も恐い話も好きじゃない。

明るく楽しいハッピーエンドの小説だけを読んでいたいと思っている。

にもかかわらず、こういう本を読んでしまうのは恐いもの見たさというやつなのだろうか。


本間も最初はそういう軽い好奇心ではじめた「出会い系サイト」だったのだろうと思う。

だがそれは取り返しのつかない事態を招いた。

これはSFでもフィクションでもない。

本間の旧友で探偵をやっている原田が言うように、インターネットというのはルールもモラルも責任感も存在しない史上初めてのメディアなのだ。

原田はそれを「魑魅魍魎」と表現したがまさにその通りだと僕も思う。

僕はインターネットの利用頻度は低いし、出会い系サイトなんかにはまったく無縁なのでそれほど心配することもないのだろうけれど…それでもやはり恐怖は感じる。

結局どんなハイテクであろうともその裏にいるのは必ず人間なのだ。そのことを絶対に忘れてはいけない。


怪物は、そこにいるのだから。