四十八歳、独身。
早期退職をして静かな余生を送る羽村祐太のもとには、なぜか不思議な相談や謎が寄せられる。
「老い」にまつわる人間模様を、シニカルな語り口と精緻なロジックで本格ミステリに昇華させた、西澤ワールドの一つの到達点。
ある意味では、西澤保彦らしさの無い作品。
西澤保彦には、西澤保彦の論理と倫理観があり、時々それがぶっ飛び過ぎていてついていけないときがある。
っていうより、そういうの結構多い。
一方、本作は極めてノーマル。
ロジックもかなり真っ当だし、短編ミステリとしてはとてもきれいにまとまっていると思う。
そのぶん、内容としてはヒジョーに地味なのだが……。
いろいろと考えさせられることは多いかも。
若い人よりも、三十代以上の読者のほうが共感すべき部分は多いだろう。
介護をする側。
介護をされる側。
心配をする側。
心配をされる側。
どのサイドにいても感じることは何かあるのではないか。
老いるということ、死ぬということは必ず誰にでもやってくる。
できることなら、誰にも迷惑をかけずに老いたい。
できることなら、たった一人ではなく、誰かに看取られて死にたい。
そんな風に、しみじみと思ってしまうのだなあ。
こういうミステリもありっちゃあ、ありだ。