amazonの電子書籍リーダ「Kindle Paperwhite」のCMを最近よく見る。
評判は非常に良いようだが、
紙と同じ感覚で快適な読書が楽しめる
ということが売りのようだ。
「天気の良い屋外でも気にせず読める」
「(電子書籍であることを忘れて)物語の世界に没頭できた」
などという感想が語られている。
でもさ、よく考えて。
それって電子書籍がやっと紙の本に近づけたということでしかないんじゃない?
「明るい日差しの中でも反射しない」
「目が疲れないディスプレイ」
「充電は数週間に一度だけ」
「片手で快適な読書」
「読書だけに集中できる」(メールや他のアプリはインストールされていない)
という長所はすべて、すでに紙の本が備えているもの。
このセールスポイントはあくまで、他の電子書籍リーダーよりはすぐれていますよ、というものであって「紙の本より優れていますよ」というハナシではまったくない。
僕はドコモのタブレットで電子書籍読書を体験してみたが、紙の本よりいいなと思えたことはあまりなかった。
唯一あったのは、検索ができること。
「この本の中に確か○○について書かれていたはずなんだけど…」という場合、電子書籍はさっと検索ができる。それはとても便利だと思った。
だけど、小説を読んでいる限りにおいては、検索をするような場面はあまりないし、正直、紙の本よりいいなと思えたことはなかった。
別に僕が本屋だから言うわけじゃない。
一人の読者として、素直にそう思った。
「Kindle Paperwhite」は4,000冊の書籍が登録できるというふれこみだが、残念ながらその程度の容量では僕の本棚は収まらない。
それに、そもそも欲しい本が全部手に入るわけではない。
たとえば、kindleストアで「有栖川有栖」を検索してみよう。
該当書籍は45件。
一方、通常のamazonブックで検索をすると192件だ。
これはkindle版も含んでいるだろうから、実際には147件。
この圧倒的な差が埋まらない限りは、電子書籍が紙の本を凌駕する日はこない。
「でも本屋が閉まっている時間でも電子書籍ならすぐに買えてすぐに読めるよ」という人もいるかもしれないが、フツーの人の生活の中で「夜中に急に本が読みたくなったけど明日まで待てない。今すぐ読みたい!」ってことってありえるかな?
そういう読書中毒の人もいるかもしれないけれど、そういう人はたぶん紙の本が好きだと思うよ?
書店員はamazonそのものはライバルだと思っている。
リアル書店でできることは何かを考え、インターネットに負けないように工夫をしていこうと毎日考えている。
でも、電子書籍がリアル書籍のライバルだとは、今のところ微塵も感じていない。
おそらくは向こう十年くらいは相手にならないと思う。
amazonが今のままの姿勢でいる限りは、もしかしたら永遠に敵じゃないかも。
電子書籍をこういう風にされたらライバルになりえるんじゃないかな……と思うことはあるんだけれどね。
たとえば……。
って、言うわけないじゃん。そんなこと(笑)