今井翔子は本と書店の仕事を愛する26歳の書店員。
ファミレスの厨房でアルバイト中の恋人とベストセラー作家、まったくタイプの違うふたりの男性の間で心は揺れる。
「いったいどっちを選べばいいの?」恋と仕事に悩み、成長する女性の姿を描いた共感力全開の恋愛小説。
日経文芸文庫という新レーベルが創刊されました。
隆慶一郎、北杜夫、高橋克彦、安部龍太郎、遠藤周作といったラインナップの中に……なぜかこの一冊。
このラインナップも正直何を狙っているんだかよくわからない。
渋いんだか、柔らかいんだか。
出版社からは配本をどうするか訊かれましたが、チェーン全体でわざわざ配本を指定するほどのものでもないなあ…と思い(失礼!!)、各店の希望に任せてしまいました。
ただ、この「書店員の恋」だけは気になっていたんですね。
このラインナップの中ではいろんな意味で目立つし……やっぱり「書店員」の文字は書店員の心をくすぐりますなあ。
で、期待して読んでみたのですが。
残念ながら、期待外れでした。
これ、べつに主人公が書店員である必然性、ないでしょ。
「夢を見失いかけて迷っているアルバイトの彼氏」と「突然現れたお金持ちの魅力的な男性」の間で、揺れ動く主人公、というチョー古典的なテーマの恋愛小説。
主人公が書店員だから、売れっ子作家と知り合いになれたわけだけど、別にこれ、書店員でなくてもいくらでも作家と知り合いになるきっかけなんて作れるでしょ。フィクションなんだからさあ。
っていうかね。
フツーの書店員ってそれほど作家と知り合いになれないから。
まして、そこから恋に落ちるパターンなんて、寡聞にして知らない。
書店の描写もありきたり。(取材なしでも想像で書けそう)
書店や、書店員のリアルな部分は何もなし。
朝出勤してきて、「本屋って朝が一番綺麗…」とかうっとりしながら、棚の本を優雅に並べ替えている書店員なんて、いないから。
どんだけゆとりだよ。
タイトルから「書店員の」という部分が外れてしまえば、僕にとってこの物語はステロタイプの平凡な恋愛小説でしかなく……正直、期待して読んだ分、とてもがっかりさせられたなあという感じでした。
残念。