売れっ子マンガ家、陣内龍二の婚約者・里美が交通事故で死んだ。
ショックのあまり、陣内は、自作のヒロインを作中で殺してしまう。
たちまちファンからの抗議が殺到。
その中に里美の死を予知した手紙があった。
日付は事故の数日前。
手紙の差出し人を訪ねると、神崎美佐という48歳の落着いた女性だった。
部屋には作中のキャラクターが飾られ、熱心なファンであることを示している。
何故、神崎は里美の死を予知できたのか?
※感想にはねたばらしが含まれますので、未読の方はご注意ください。
自分の娘を自殺に追い込んだ憎い男を殺すために。
それも、普通の殺し方ではなく、歓喜の瞬間から絶望の淵へ叩き落とすような殺し方で。
それはまあ、納得できるんですよね。
ただそのために、
「相手に自分が人の死を予言できる超能力者だと信じさせる」
→「相手の死を予言する」
→「相手を無事に守り、死に予言に勝ったのだと喜ばせる」
→「そのときに殺す」
という手順を踏むというのは……いくらなんでも、回り道が過ぎないでしょうかね。
もう少し、やりようがあったのでは。
これがちょっと引っかかりました。
神崎が行っていたのが、「死の予言」ではなく、「殺人予告」であったという展開は結構、衝撃的でした。
予言した相手が死んだら、「そいつが殺したんじゃないの?」って考えるのがフツーなんだけど、むしろ「何かトリックがあるのでは?」という方向にミスリードしていく書き様はとても巧いですね。
(まして、郵便のトリックは結構有名なので)
それだけに、神崎のやり方に説得力が薄かったことが残念。
(まあ、致命的な瑕疵ではないと思いますが)
ラストは……評価が難しいです。
僕は正直、あまり好きではありません。
神崎が陣内の咽喉を掻き切るところでラスト……でよかったように思います。
ただ、蛇足とまで言い切れないのは、ラストで「陣内と、熱狂的オタクの三橋の視点からこの物語が書かれている理由」が明らかになったりするから。
このあたりの論理性、伏線の回収はお見事だと思います。
それを差し引いても、でもやっぱりラストは無くてもよかったかな。
このあたりは、読者によって意見が分かれるところでしょうね。