「本能寺六夜物語」 岡田秀文 双葉社 ★★★☆ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

天下統一を目前にしながら、本能寺で明智光秀の謀反に斃れた織田信長。
それから三十年余、とある山寺に「本能寺の変」に関わった武士や僧侶、尼ら六人が集まり、事変の裏で起きていたことを語り合う。
彼らはいったい何を見、何を聞き、何を思ったのか。何に関わり何を知ってしまったのか。
いまなお謎に包まれる「本能寺の変」の真相を解き明かす怪作。



本能寺六夜物語 (双葉文庫)



本能寺の変について書かれた小説は数多ある。
実は黒幕は秀吉だったとか、家康だったとか、柴田勝家だったとか、お市の方だったとか…。
犯人にされていないヤツはいないんじゃないかっていうくらい。
果ては信長は実は自殺だったとか…。


珍説、奇説は今までにいくらもあった。

そういう意味において本作の第六夜で語られる真相は、取り立てて珍しいものではない。


というより、ちょっとばかりガッカリする。


え? 本能寺の変ってそんなつまんない理由で起こったの?


歴史を動かすターングポイントとなった事変のきっかけがこれかあ……と、ある意味驚愕。

なので、そこにはあまり期待しないように。


それよりも、本能寺の変のサイドストーリーとも言える各話が面白い。
特に、第一夜。
秀吉の狡猾さが恐ろしい。

それから第二夜。
狡猾さで言えば、家康のほうが上か。その奸計は読者の想像を確実に超えるはず。


まるでミステリを読むように楽しめる。

後味は決して良いとは言えないが、真相に迫っていくその手順が本当に巧い。
歴史小説と括ってしまうのは惜しい。


歴史小説は苦手。
そんな人にもぜひ読んでほしい。