警視庁のネット犯罪の対策部署として設立されたサイバー犯罪対策課。ある日、動画サイトYOURTUBE に、新聞紙を頭に被った男が、某食品加工会社に放火の予告をしている動画が発見される。
その後も幾度となく犯罪予告を繰り返す男。警視庁はこの男を“新聞男”と名付ける。
サイバー犯罪対策課は新聞男は複数犯であると睨み、新聞男らの正体や動機を探るべく本腰を入れて調査を始めるようになる。ネット上では通称“シンブンシ”と呼ばれることの多い新聞男。
彼らは主にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で失言をして炎上騒ぎを起こした者に対して、犯罪予告をしてその後制裁を行っている。
制裁の方法もターゲットを監禁拉致して重傷を負わせる、精神的苦痛を与える、または世間での評判を失墜させるようなケースまで様々である。
また、シンブンシ一味の真似をして駅前での殺害予告を実行しようとする者が現れるなど、社会現象を巻き起こすまでなった。ネット上のユーザー投票でも徐々に支持が不支持を上回るようになり、シンブンシはカリスマ的ともいえる人気を博していく。
シンブンシの真の目的は?
そして警視庁サイバー犯罪対策課の包囲網は彼らを捕えることができるのか?
3巻で完結かあ…。
残念…。
連載を追うのではなく、コミックが出るのを首を長くして待ちながら読んでいた身としては、楽しみがひとつ減ってしまったさみしさがあります。
本当に読み応えのあるミステリでした。
でも。
この物語は最初から最後まで、きちっと計算されて組み立てられた作品だから。
無意味な引き伸ばしは必要ない。
スタートから予定されたゴールに向かってまっすぐに進み完結したのだから。
そして、それは、物語の中の主人公たちも同じ。
3年という長い年月をかけて、彼らは彼らの計画を全うした。
その本当の目的を、世間にも警察にも、そして読者にもひた隠しにして。
犯人もその動機も読者には(途中から警察にも)丸わかりになってしまう、いわゆる倒叙物のミステリであるにもかかわらず、最後の最後で、きっちり読者を裏切ってくれた。
切なくて、哀しくて、なのにとても暖かいラスト。
社会への復讐なんかで……人は命や人生を賭けることなんかできないよな。
もし、人が自分自身を天秤の片側に乗せることができるとしたら。
そのとき、もう片側にはやはり人が乗っているのだろうな。
“それが誰かのためになるという間違いのない確信を得たとき”
“人は利得を超えた行動をとることがある”