「ダブル・イニシャル」 新津きよみ 角川書店 ★★☆ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

安藤亜衣里、木村京美、市川郁子。かつて米国で起きた「Wイニシャル殺人事件」の真似をするかのように、姓名のイニシャルが同じ女性が連続して殺害された。
遺体には左半身に犯人による損傷が残される共通点があった。
警視庁捜査一課の刑事・井垣俊は、彼女らが同じ結婚相談所に登録していた事実に辿り着く。
婚活の果てに幸福を掴んだはずの女性を狙ったのは誰か。





この作品についてはけっこう酷評しています。
本作または新津きよみさんがお好きな方はお読みにならないよう。


犯人はなぜ、「あんどう・あいり」「いちかわ・いくこ」のように、姓名のイニシャルが重複している既婚女性ばかりを狙うのか。
この連続殺人事件の裏にはどんな意志が隠されているのか。
ダブルイニシャル以外に、表には表れていないミッシング・リンクがあるのか。

どんな真相が待っているのか……とてもワクワクしながら読み進めました。


が……。
真相を読んでびっくり。

ダブルイニシャルは不吉だと言われてプロポーズを断れた弟が、十数年後に自殺した。
あのとき断った女が、今は結婚してダブルイニシャルになっている。

絶対に許せない。
あの女が断っていなければ、弟は今頃しあわせに暮らしていたのに。
結婚してダブルイニシャルになった女たちを、弟の名前のスペルの順に殺せば、弟はこの世によみがえる。


……なんだよ。そりゃ。


あのさー。


犯人がアタマおかしい人だっつーことにしちゃったら、何でもアリなんだよ。
それじゃ、真相もへったくれもないでしょうが。


ミステリは「魅力的な謎」だけでは成立しないの。
その謎に対する「美しい着地」がセットになっていて、はじめてミステリになるの。


って、憤懣やるかたないカンジで同僚に言ったら、


「新津きよみさんってミステリ作家じゃないじゃん。ホラー作家じゃん。ミステリだと思って読んだお前が悪いよ」


「……ぬ。でも、ホラーとしてもレベルが高いとは思えない。ハラハラするシーンなんてひとつもなかったし」



「ミステリだと思って読んだら全然違った、ってことがお前にとってはホラーだろ」



……たしかに。