「花の鎖」 湊かなえ 文藝春秋 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

雪月花。美雪、沙月、梨花。
三人の女性に関わる「K」とは?
何がなんでも最後まで隠し通す感じではない。三人の関係性を読者に徐々に分からせている。絶妙なヒントを散りばめながら。
今までの湊かなえのイメージとは違う側面を感じることのできる作品。
最後までページを捲るスピードをゆるめさせない。
確認しながらゆっくりではなく一気に読み切ってその後の読後感を愉しんでほしい感涙の物語。
その後、ゆっくり二度目を愉しんでください。






ドラマになりました。
今までずっと積ん読になっていたのですが、それをきっかけに読んでみることに。


※思いっきりのネタバラシです。未読の方はご注意を。


同じ町で暮らす三人の女性の物語が並行して書かれます。
少しずつ、微妙にリンクする彼女たちの物語。

いつ、どこで彼女たちで邂逅を果たすことになるのか。
その偶然と必然の出逢いを楽しみに物語を読み進めていくことになるのですが……。



妙な違和感を覚えます。



同じ町で、いくつもの接点を持っているはずの彼女たちが、なぜいつまでたっても出会わないのか。
同じ事柄を語っていても、なぜ語り手によって微妙に異なったニュアンスになるのか。


そして、その理由は読み進めるうちに次第にわかってきます。
上述の作品紹介にもあるように、この物語は殊更に仕掛けを隠そうとはしていません。
物語全体が、優しくその構造の秘密を教えてくれています。
もしかしたら、その仕掛けがなるべく早くわかったほうが物語を楽しめるかもしれない……そんな風にすら感じます。

ただし、構造そのものはちっとも優しくなくて……できれば人物相関図をつくることをお勧めします(笑)



みっつの物語は最後にきっちり「花の鎖」で繋がれます。

湊かなえさんにしては(という書き方は失礼かなあ)とてもすっきりと終わる物語です。

僕はこういうの、嫌いじゃないなあ。