待ち切れず買いに行く | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

唐突な話題ですが。


毎朝お店に入ると新聞を4紙チェックします。(日経、読売、朝日、毎日)



なんだか仕事のデキるサラリーマンのハナシみたいですが、読んでいるのは国内時事でもなければ、国際情勢でもない。ましてや株価の値動きなどでは絶対にない。

(この時点でデキるサラリーマンでないことは明らかだ)



本屋さんが関心を持って眺めるのは、新聞のほぼ下半分。

そこに掲載されている「書籍や雑誌の広告」のみ!



もうね。新聞広告のチカラって、ネット社会になっても相変わらずスゴイよ。

特に実用書やビジネス書、新書あたりね。

(文芸書、文庫なんかはあまり新聞に載ったからと言って、売上に影響はない…気がする)



で、実用書やビジネス書、新書に興味を示す世代というのはやっぱり高年齢層なわけですよ。

(あ。その前にそもそも新聞にちゃんと目を通している(もしくは購読している)ヒトの平均年齢が高いんだなたぶん)



そうすると、自分が欲しい本のタイトルなんて覚えていらっしゃるわけもなく。

著者も出版社もわかるわけもなく。

場合によっては、何について書かれた本かも忘れていることもあったり。(ホントなんですよ!)



僕は問いたい。


この世に、問題文が全然読まれてないのに「さて何でしょう?」って問うクイズ番組があるのか、と。


解答用紙のみが配られ、「さあ始め」と声のかかるテストがどこの学校にあるのか、と。



ただただ、彼らが口にするキーワードは「今朝の新聞で見た」




ときには「一昨日くらいの新聞で見た」




ひどいときには「いつだか忘れたけどたぶん新聞で見た」




このほぼノーヒント状態のクイズに正解するためにはやっぱり、毎日新聞各紙に目を通しておく必要があるわけで。


デキるサラリーマンにはなれませんが、無茶ぶりクイズの回答者にはなれるかもしれない。僕ら。





で、ここからが本題。

(長いな前振り!)



今朝も新聞読んでいたら、読売新聞の書評で「本棚探偵の生還」(喜国雅彦)が紹介されていた。


これ。







古書蒐集をこよなく愛する著者の熱い魂が込められた古本エッセイ。

「本棚探偵の冒険」「本棚探偵の回想」(いずれも双葉文庫)に続くシリーズ3作目で、出版を待ち焦がれていた一冊。



もう狂喜乱舞ですよ。

お客様の問い合わせのための新聞広告チェックなんざ、知ったこっちゃないね。


ウチの在庫にないのはわかっている。

配本があれば、絶対に気がついたはずだから。


だけど今から注文なんてかったるいことやってられるか。




そうだ!

こういうときのK伊国屋書店じゃないか。

何のために国内最大手の書店チェーンK伊国屋がウチの店の側にあるのか。

K伊国屋なら……ああ、面倒くさい。もう紀伊国屋でいいや。

紀伊国屋なら間違いなく配本があっただろう。

すぐ買いに行こう!




……というわけで、3000円近い高額文芸書を他店で購入するという暴挙により、僕は今日一日、同僚たちに白い眼で見られることになりましたとさ。




というお話。

(なんか、これ前振りのほうが長かったな…)