ボードゲームと小説が融合した驚愕のSFミステリ誕生!
生死の審判がオセロのルールで下される!
異界に墜ちた人々の、命を賭したゲームの行方は――。
加門耕次郎は気がつくと、見たこともない異様な世界にいた。
荒れ果てた大地、濁った空、そして大地に描かれたマス目に配置された人々――。
たくさんの人々が倒れている中、目覚めているのは4人だけ。生者の上空には白い丸が、死者の上空には黒い丸が浮かんでいた。
どうやら、この世界はオセロゲームのルールに則って生死が決定されるらしい。
圧倒的に不利な状況の中、神の手に対抗し、より多くの人々を甦らせる逆転の手はあるのか?
一手ごとに緊張感が高まる中、加門たちの運命は?
大金(もしくはそれに準ずるもの)を獲得するために自らの命や人生を賭けてゲームを行うというストーリーはここ数年で、SF小説や漫画のひとつのスタイルとして確立した感がある。
たとえば、映像化もしたコミックの「賭博黙示録カイジ」や「LIAR GAME」なんかがその代表的な例だと思う。
一定のルールの基に命賭けの戦いをするという点で考えると、「DEATH NOTE」あたりも含まれるかもしれない。
これらの大ヒットにあやかるかの如く、雨後の筍のように類似作品(特に小説において)が乱出しているが、いずれも下手なものまねの域を出ていないように思える。
「カイジ」や「ライアーゲーム」が面白いのは人間ドラマやストーリーテーリングの巧さはもちろんのこと、何と言ってもそこで扱われる「ゲーム」のオリジナリティにあるのではないかと僕は思っている。
ゲームがオリジナルだからこそ、ストーリーにもオリジナリティが出る。キャラクターも活きるし、ドラマも生まれる。
一方、本作で扱われるゲームは「オセロ」である。
ルールも単純。人間側は白駒を受け持ち、黒駒になったマスにいる人間は死亡する。
ただそれだけのルールである。
ゲームとしては非常にオーソドックスでそこには何の工夫もない。
ゲームの進行をただ追っていくだけでは、オセロゲームの実況中継になってしまい、SF小説にはなり得なそうだ。
にもかかわらず、この小説は淡々とオセロの実況中継をし続ける。
そこにはもちろん、人間ドラマが展開されなくもないのだけれど、キャラクターが多い上に、語られるドラマもチープでありきたりだからまったく物語に引き込まれていかない。
途中からは正直、この物語がどういう結末を迎えるのかを確かめるためだけに惰性でページをめくっていただけのようなものだ。
その結末も……特に驚きもなければ感動も感銘を受けることもなかった。
帯には「ボードゲームと小説が融合した驚愕のSFミステリ誕生!」と銘打たれていたが、この小説は「驚愕」でもないし「ミステリ」でもないし、「ボードゲームと小説が融合」してもいない。
キャラクターの数をしぼって主人公を固定した上で、人間をしっかりと描写し、オセロの対戦相手である神をひっかけるようなどんでん返しのトリックが仕掛けられていたなら……「驚愕のSFミステリ」になったかもしれないのに。
これから読む人には申し訳ないけれど、僕にはちっとも面白くなかった。