ブライアン・イーノ、まとめて、アルバムをレビュー

Here Come the Warm Jets / Brian Eno
「Here Come the Warm Jets」は、レンタルして、リッピングして聴いています。
「Here Come the Warm Jets」(1973)は、ロキシー・ミュージックを脱退したイーノの記念すべきファースト・アルバムですね。
1970年代の前半は、プログレシッヴ・ロックやグラム・ロック、或いは、クラウト・ロックやカンタベリー系ロックの全盛期ではあったけれど、「Here Come the Warm Jets」は、それらとは、又、違った方向性を打ち出した音楽性になってるんだよね。
元々、70年代初期のロキシー・ミュージックは、意識的に、ディストピア的な視点によって、初期のロックンロールを振り返っていたんだよね。
「Here Come the Warm Jets」に関しても、ノスタルジーを意識したロックンロールの曲は、「On Some Faraway Beach」や「Some of Them Old」で、傾向が表れているけれど、或る意味、イーノ自身の儚さや喪失感を表現する為の役割を果たしている曲になっている、と言えるんだよねぇ。
又、アルバムの収録曲、「Baby's on Fire」のドローンのような反復するギターやシニカルなヴォーカルは、パンクやポストパンクの到来を予言させる曲であり、前衛的な印象になっているんだよねぇ。
そして、「Driving Me Backwards」や「Dead Finks Don't Talk」のディストーションやノイズ等の音の使い方は、ノイズ・ロックやポスト・ロックの伏線を感じさせるんだよね。
それ以外では、「Cindy Tells Me」は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響をノスタルジー的に表現していると感じさせるし、「Blank Frank」は、ノー・ウェイヴの未来を意識させる曲だと言えるんだよね。
要は、「Here Come the Warm Jets」は、ロック・ミュージックの進化を先取りした、異次元的な立ち位置の作品である、という事なんだよね。
流石に、イーノは、ファースト・アルバムから、良いの作るよなぁ。

Taking Tiger Mountain By (Strategy) / Brian Eno
低金利、大概、参ってんねん・・・、じゃなくて、「Taking Tiger Mountain By Strategy」ですね。(金利とは、資金を一定期間貸した事に対して支払われる報酬の事。利子。又、利子額の元金に対する割合。)
「Taking Tiger Mountain By Strategy」は、レンタルして、リッピングして聴いています。
「Taking Tiger Mountain By Strategy」(1974)は、100枚余のカード(「オブリーク・ストラテジーズ」)を作成し、無作為に選んだカードの指示通りにレコーディングをする、という方法論によって作成されているアルバムなり。
アルバムの表題の括弧にある「By Strategy(ストラテジーによる)」とは、1975年に「オブリーク・ストラテジーズ(Oblique Strategies)」として出版される事になる、謂わばイーノ自身の為の占いカードのプロトタイプを指しているなり。
「オブリーク・ストラテジーズ」はイーノの創作過程に於ける手段の一つとして知られていて、「Taking Tiger Mountain By Strategy」の他、「Another Green World」やボウイとのベルリン三部作、その他、多くの場面で使用されているんだよね。
「オブリーク・ストラテジーズ」は、ジョン・ケージにも影響を与えた古代中国の「易経」に似ていて、カードには具体的な教訓が書かれているけれど、これらは、画家のピーター・シュミットとの共同で開発された、との事ですね。
まぁ、構造主義によって主体的である事に疑問符が付けられた60年代の思想も影響していて、必ずしも自由意志を尊重しないという創作のスタンスが実行に移されているんだよね。
アルバムの音楽性としては、イーノが少年期に聴いていた黒人音楽をベースにして、エキゾチック・サウンドに音響実験の要素を加えたジョー・ミーク(「I Hear a New World」)を軸に、カンやヴェルヴェット・アンダーグラウンドの要素を拡大していく、といった感じですね。
基本的に、このアルバムは、脱力志向のレイド・バック・サウンドがメインになっているけれど、無機質でソリッドな「Third Uncle」だけが異質で、ニュー・ウェイブに何かしらの影響を与えているのは、間違い無いと思うんだよねぇ。
まぁ、以降の「Another Green World」は、一気にシリアスなモードに変貌しているし、陽気でお調子者のイーノのサウンドが聴けるのは、このアルバムまでなんだよなぁ。

Another Green World / Brian Eno


貴方のグリーン・カード・・・、じゃなくて、「Another Green World」ですね。(グリーン・カードとは、米国政府が外国人に発行する労働・永住許可証の通称。)
「Another Green World」は、レンタルして、リッピングして聴いていますが、20代前半の頃も、レンタルして、MDにダビングして聴いていましたね。
まぁ、20代前半の頃は、何かこうね、まだイーノの良さがね、理解出来て無い処がね、あったと思うんだよねぇ。
「Another Green World」(1975)は、ブライアン・イーノがソロ・アーティストとしての地位を確立したアルバムで、ソングライティングとして優れているだけでなく、その後のアンビエント・ミュージックへの敷石になっている作品なんだよね。
そして、このアルバムは、インストゥメンタルの曲が中心になっていて、イーノがスタジオを楽器として扱えるかどうかの試金石になっている作品だと言えるんだよね。
アルバムのゲストとして制作に関わっているのは、ロバート・フリップ、フィル・コリンズ、ジョン・ケイルなど優秀なミュージシャンだけど、曲の半分近くはイーノ自身が演奏している、との事だヨン。
因みに、「St.Elmo's Fire」のフリップの圧倒的なギター・ソロは、ウィムズハースト式誘導起電機のように、二つの電極の間で稲妻のような不規則な火花を散らす、といったイメージの演奏を狙っていて、ライナーノーツには、”ウィムズハースト・ギター”とクレジットされている、との事ですね。
まぁ、「Another Green World」は、アンビエント・ミュージックの入門編として扱われる事も多いけれど、アンビエントとして聴くにしては、収録曲は鮮やかでエモーショナルな曲が多い、と言えるんだよなぁ。
アルバム全体の雰囲気としては、一応、牧歌的で、イージー・リスニング的な作品になっている、とは思うんだけどねぇ。
只、イーノのアンビエント・ミュージックの制作の割合としては、「Music For Airports」のような居住空間に流す現実的な音楽よりも、「Another Green World」のような模造世界、乃至、人工自然的な音楽の割合の方が高いんだよなぁ。
まぁ、イーノは、基本的に、現実と人工の境目を取り払うような反意識的、反瞑想的な音楽を目指していて、社会は調節出来るというサイバネティックス理論に基づいたアンビエント・ミュージックを制作している、という事なんだよねぇ。

Cluster & Eno / Cluster & Eno
暮らしたい、安堵(町)、良いのぅ・・・、じゃなくて、クラスター&イーノですね。(安堵(町)とは、奈良県北西部、奈良盆地中部の町の事。米作の他、イグサを栽培。工業団地が造成され宅地開発も進んでいる。)
以前、クラスター&イーノのレビューは、ブログに書いた事がありますが、再レビューですねぇ。「Cluster & Eno」(1977)は、紙ジャケCDを所持しているヨン。
一応、曲の解説をしておくと、1曲目「Ho Renomo」は、カンのホルガー・シューカイがベースを弾いていて、4曲目「Wehrmut」は、1993年、ミックス・マスター・モリスがバーバレラ(スヴェン・ヴァース)のリミックスに於いて、サンプリングされていますね。
まぁ、ブライアン・イーノは、楽器が弾けなくて譜面も書けない「非音楽家」であるけれど、クラスターもまた芸術家ヨゼフ・ボイスから来ている「非音楽家」であり、クラスター&イーノは、それ故に、有機的な固有のテクスチャーになってるんだよね。
因みに、楽器の担当は、ピアノがレデリウスで、シンセサイザー担当がイーノとメビウスといった処で、小さなメロディと電子音の共鳴、そして、ダブの影響下にある空間が独特で、エクセレントですねぇ。

Before and After Science / Brian Eno
ビフォーアフター・・・、じゃなくて、「Before and After Science」ですね。まぁ、何て言うか、そういう事ですね。
「Before and After Science」(1977)は、レンタルしてリッピングして、聴いています。
私のブログのランキングで、ニューウェーブの部門では、このアルバムを5位にしていて、「Another Green World」より好きなアルバムだったりするんだよね。
75年の「Another Green World」のリリース後に、「Before and After Science」が発表されているけど、内容的には、同時期に制作されたボウイのベルリン三部作と同様のアルバム構成になってるんだよねぇ。
アルバムの構成の内容は、「Low」や「Heroes」と同じく、サイドAがアヴァン・ポップ寄りのニューウェーブ的なサウンドで、サイドBがアンビエントな雰囲気の曲で統一されている、といった処ですね。
収録曲では、「By This River」がイーノのキャリア中、ベスト5に入るだろうと思われる名曲だけど、まぁ、個人的に言うなら、最も好きな「St Elmo's Fire」の次に、「By This River」が好きな曲なんだよなぁ、程良く控えめな感じがして、良い曲だよねぇ。
そして、「Before and After Science」にリンクされる音楽性は多彩で、エクスペリメンタル・ポップ、クラウトロック、ファンク、ノー・ウェイヴ、パストラル・サイケデリック・フォーク、アヴァン=ロックなどが、巧みに混合されているんだよねぇ。
この時期のイーノは、古臭く後ろ向きになってしまったロックに対して、新しい発見をする旅をしていたんだよねぇ。知らない音楽を聴いて、どこか遠くへ行きたかったんだろうねぇ。

After the Heat / Eno,Moebius,Roedelius
阿父、ターザン、良い人・・・、じゃなくて、「After the Heat」ですね。(阿父とは、父を親しみ敬っていう称の事。お父さん。ターザンとは、バローズの大衆小説「猿人ターザン」の主人公。)
「After the Heat」(1978)は、紙ジャケのCDを所持していますね。
今回のアルバムでは、イーノのボーカル曲が3曲入っていて、「Tzima N'Arki」は、「Before and After Science」の「King's Lead Hat」のイーノの歌のサビを逆回転して使っているんだよね。
又、「Tzima N'Arki」は、ホルガー・シューカイのベースも素晴らしく、レゲエからの影響を感じさせる楽曲になってるんだよねぇ。
「The Belldog」は、「By This River」に匹敵する位の名曲で、「私たちは1日のほとんどを季節の無い暗い小屋の中の機械の前に居る」というシュールな歌詞と、「bulldog」を捩った「belldog」というタイトルは、監視され管理されている現代社会の人間の事を想起させるんだよねぇ。
このアルバムは、基本的にアンビエントな音楽性ではあるけれど、「Bass & Apex」などの曲では、トーキング・ヘッズのセカンド・アルバムにも通じるリズミックな躍動を随所に感じるんだよねぇ。
まぁ、アンビエントとしての律動を感じる音楽性は、90年代以降のテクノでは普遍的になっているけれど、それに関しては、このアルバムが劫初となって発展していった、と言えるかもしれないんだよねぇ。

Ambient1:Music for Airports / Brian Eno
「Ambient1:Music for Airports」(1978)は、紙ジャケのCDを所持していて、このアルバムが、私が最初に購入したイーノのアルバムと思っていたけれど、ちゃんと思い出してみると、「Spinner (Eno/Wobble)」が、最初に購入したイーノのアルバムだったんだよなぁ。
90年代後半のテクノ・ブームの頃に、何かのきっかけで購入した「Spinner (Eno/Wobble)」は、ジャー・ウォブルが誰だか分からず聴いていて、結局、良さが分からずに売却した経緯があるんだよねぇ。
レンタルで借りて来た「Another Green World」も、当時は良さが分からない処があったし、実質、イーノの良さを本当に理解出来るようになったのは、ゼロ年代後半に購入した「Ambient1:Music for Airports」からなんだよなぁ、まぁ、そういうもんだろぅ~。
「Ambient1:Music for Airports」は、イーノが「アンビエント」として命名した音楽の記念すべきファースト・アルバムで、彼のキャリアを代表する不朽の名作であり、私の最も好きなイーノのアルバムでもあるんだよね。
只、このアルバムはリアルタイムで、広く評価されている訳では無く、90年代以降のアンビエント・テクノのムーブメントによって、再評価されて、歴史的名盤となったんだよねぇ。
因みに、私のブログのランキングのアンビエント部門では、「Ambient1:Music for Airports」を、胡瓜・・・、じゃなくて、9位にしてますね。
元々、「空港のための音楽」という副題は、ケルン国際空港の優雅なデザインに感銘を受け、不安を和らげるその建築に見合った音楽を作りたい、という考えがあって生まれたタイトル、との事ですね。
しかし、このアルバムを制作した結果としては、それ以上の波及効果が、音楽の世界に於いて生じていてるんだよねぇ。
イーノが解説する「アトモスフィア」としての音楽は、音楽における中心(モチーフ)の放棄を意味していて、作者の個(感情)が曲を支配する音楽では無い音楽、という事を示しているんだよね。
そして、「Discreet Music」(1975)の裏ジャケットで、イーノが記しているけれど、それは、雨の音や光の色彩が環境の一つであるように、その音楽自体も環境の一つであろうとする音楽、という事を、イーノは解説してるんだよね。
つまり、雨の音(自然界)とレコードの音(人工物)との境界線が曖昧な音楽の事であり、それは、静寂と思考の空間を生み出す音楽の事でもあるんだよね。
「Ambient1:Music for Airports」の曲目を解説していくと、「1/1」は、ロバート・ワイアットがピアノを弾いていて、エコー、チャイム、ドロー音が循環性を保ちながら変化する、という奥の深い音楽性になっていますね。
「2/1」は、ジャケット裏面にケージ風のグラフィック・スコアが公開されていますが、ジェネレイティヴ・ミュージック(自動生成音楽)の手法が、理解し易い形で、聴ける音楽になっていますね。
ここでは、7つの音程の女性の声が、長さの違うループとして、其々、繰り返されていて、其々のループが、半永久的に変化する形式になっているんだよねぇ。
「1/2」は、不規則な繰り返しのテープ音楽で、ピアノとシンセサイザーによるドローンと声の音楽になっていますね。
「2/2」は、コニー・プランクがエンジニアを務めていて、「Cluster & Eno」(1977)に共通する温かい電子音が、複数の位相で不規則に鳴って、断片化した旋律が重なり、それらが循環する展開になっていますね。

Ambient2:The Plateaux of Mirror / Harold Budd / Brian Eno
「Ambient2:The Plateaux of Mirror」(1980)は、レンタルしてリッピングして聴いてい益荒男。(益荒男(ますらお)とは、立派な男、強く勇ましい男子の事。又、狩人、漁師の事。)
ハロルド・バッドは、アメリカ人前衛作曲家/ピアニスト/詩人で、2020年12月にCOVID合併症で亡くなっているんだよね。
「Ambient2:The Plateaux of Mirror」は、カナダのスタジオで制作されていて、大都市の喧騒とは無縁のコオロギやカエルの鳴き声、といったフィールド・レコーディングに、バッドのサステインされたピアノの演奏が混じり合っていく、という展開なり。
アルバムの音楽性としては、清澄で無垢な印象派を思わせる処があり、アンビエントとして機能もしているけれど、ニューエイジ・ミュージックに近いロマンチシズムを感じさせるんだよなぁ。
「First Light(夜明け)」から始まり、「Failing Light(弱まっていく光)」で終わる自然の推移を移すアルバム構成は、アイロニーで掻き回すイーノの性向も無く、リスナーを素直に美しい音楽だと思わせる事に、成功してるんだよねぇ。

Ambient4:ON LAND / Brian Eno
「Ambient4:ON LAND」(1982)は、レンタルしてリッピングして聴いています。
これまでイーノの作品の内、7作品までは日立市のツタヤでレンタルして聴いているけど、YOUTUBEでも聴けるとはいえ、良くレンタルで置いてあったなぁ、といった感じで嬉しかったのを憶えてルンバ。(ルンバとは、キューバの黒人の民俗音楽。)
まぁ、iPodの容量がある為、何から何までアーティストのアルバムを片っ端からレンタルはしていなくて、一応、機能性や必要性も考慮して厳選して借りて来ているけれど、イーノの作品に関しては、絶対に外せないと思わせる魅力があるんだよなぁ。
「Ambient4:ON LAND」は、「ダーク・アンビエント」の異名がある作品で、シリーズ4作中、最も暗くて不穏な雰囲気を持つ音楽性になっているんだよなぁ。
この作品のモチーフは、イーノの生まれ故郷、海に面する英東部サフォーク州の浜辺/川/湿原を軸とする、イギリスの風土やノスタルジーを、音で造り出す事にあるんだよね。
「Ambient4:ON LAND」は、コンセプチュアルな構成とパーソナルなテーマ性があるので、イーノの作品の中では、割と理解しやすい部類に入ると思うんだよねぇ。
因みに、「イーノ入門」(ele-king books)に依ると、イーノはイングランド、サフォーク州の小さな田舎町、ウッドブリッジの機械好きの郵便配達人の息子、という労働者階級の家庭に生まれ育っているんだよね。
そして、少年時代は、賛美歌とラジオから流れるドゥーワップが好きで、10代後半からは、アート・スクールや美術学校で学び、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジョン・ケージ、スティーヴ・ライヒ等に影響を受けたんだよねぇ。

(2026/4/18)