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ほとんど観た歌舞伎の話

ヘレン・ミレン(Queen 他)×イアン・マッケラン(LOTR 他)主演の映画『グッドライアー』を観ました。

嘘をつく話だけど、その嘘がどういう嘘かでもうネタバレなので、
以下ネタバレ。





















投資詐欺、結婚詐欺などで儲けている老紳士ロイ(マッケラン)と、
品のいい老女ベティがマッチングサイトでお互いを見つけて、お食事デート。
初めからお互いにタバコは吸わない、酒は嗜まないと嘘をついていましたが、
その辺は会ってホントのころがわかっても気にせずスル―しています。
さりげなく、高価なお買い物をキャッシュで払ったと喋るベティに、ロイの目が動く。
ロイの目的はベティの資産だけど、ベティの家の周りには怪しい若い男がうろつく。
さてベティがロイと付き合う目的は、夫と死別した未亡人の「いいお友達がほしい」が本当なのか?

ロイが動かしてる詐欺の金額はとても大きいので、ベティはそれを知って狙ってるのか?
はたまたロイは暴力的な手段も使う男なので、ベティはそこに関係しているのか?
ベティはロイを購入したての郊外の家に「お友だち」として逗留させ、海外旅行にも行きたいという。
ベティの孫のスティーブンはロイを胡散臭く眺めてる。

旅行先のベルリンで、スティーブンがロイの身元を調べ、暴く。
ロイはドイツ人ハンスだった。
戦後、イギリス人ロイと組んでナチスの残党を捜査していた時に、ロイが殺された。
その時に殺されたのはハンスということにして成替わったのだった。
おおぅ!
けれどもハンスがナチだったわけでもないし、ベティは「今のあなたが大事」とか言って、
一緒にイギリスに戻ってまた暮らし始める。

身元がばれてヒヤッとしたロイだがベティの好意に安心して、
さらにベティの資産を奪う計画を進める。
なんてやつだ。
二人の資産を詐欺仲間の運営する共同口座に移し、二人だけのパスワードを設定する。
ベティが選んだパスワードは壁に飾った絵に描かれた花「lilies」。

さてこれでこの女も用済だ、ロンドンへ行って口座の金を全部抜いて移してしまおうと出かけるロイ。
しかし送金用のキーパッドが鞄にない!
慌ててベティの家に戻るロイ。
するともう家の中に家具はなく…
やっぱりベティもロイの金目当てだったのか?

ここから驚愕の展開が。

家に残ってたベティの告発によれば、ベティはかつてベルリンに住んでいて、
英語ができる労働者階級の子ハンスに英語をならってた資本家の四女リリーだった。
戦争が激しくなり父親たちはうまく事業を畳む算段をしている。
三人の姉たちは広い部屋で踊りの練習をしている。
そこに引っ張り込まれたハンスはハイティーンの少女たちのからかいを受け、
腹を立ててひとりのドレスを踏んで破いてしまう。
怒る姉たち、しかしそれ以上に燻った怒りを持ったハンス。
そこに何も知らず、ハンスに憧れ続けているリリーの部屋でのレッスンの時間が来る。
15歳のリリーは、自室では怒りに任せたハンスにレイプされた。
姉たちへのこと、リリーの異変でハンスは速攻でクビ。
しかしハンスはこの一家を当局に告げ口して、結果として父親は逮捕・絞首刑。
母親は自殺。
遺った姉妹は下宿(家、大きいから)をしてしのいだが、爆撃で姉三人は死亡。
リリーひとりソ連軍が占領に入ったベルリンで、辛酸をなめて生き残ったと。

私は満州にソ連軍が来た時に、若い日本人女性がどんな目に遭ったか、
いろいろ読んできた。
ティーンエイジャーだったリリーもそういう目に遭ったのだろうなという想像ができる口調だった。

ロイは資産家女性を探してたけど、ベティはハンスを探していたのだ。
半世紀以上たっている。
ロイ@ハンスは「なんでいまごろ?」と問う。
ベティ@リリーは「自分を解放するために」と答える。

ロイ@ハンスがベティ@リリーのキーパッドを奪おうと襲い掛かるので、
ベティ@リリーは助けを呼ぶ。
それはロイ@ハンスに騙され搾取され暴力の手先に使われた人たちだった。
ロイ@ハンスの行き先は病院で、ここで一生を終えることになるだろう。

ベティ@リリーはあの殺風景な家とは全く違う、
庭があり家具もごちゃごちゃある家に子どもや孫と集まってお茶の時間を持つ。
これがベティの現在の本当らしい。
スティーブンは怪しい男を装って祖母の身辺をガードしてた孫の友人で、
いろいろ調査をしてくれてたのでした。
まだ少女の孫三人が庭の水辺でびしょびしょになって遊んでいます。
その子たちを遠い目で見るベティ@リリーには、ベルリンでの幸せな少女時代が見えるのかもしれません。

ハンスはリリーの初恋の相手だった。
その人と再会して復讐することだけがリリーの目的だったのだろうか。
ハンスは若い頃もハンサムだったけど年老いても素敵な紳士になっていた。
もしハンスがベティをリリーと思い出し、生き方を替えたらどうなっただろう?
残念ながら「こういう目に遭っても仕方がないか…」な人になってたけど。

ハンスはリリーに「半世紀も経ったのに!?」って言うけど、
リリーは「半世紀も苦しんできた」だと思う。
孫もいるのだからイギリス人のベティとして生きた時間もあるだろうけど、
やはり戦争で家族を失ったリリーとして生きた時間もあるのでしょう。

話の展開とか、結末がどうだこうだというよりも、
人が生きていく中で経験するさまざまのことへどう向かい合うのか、
これでよかったのか、よくないのか、そもそも人それぞれだろうし、
私も半世紀以上生きてきたので考え込んでしまう映画でした。

ヘレン・ミレンは「黄金のアディーレ」でも戦争で犠牲になった家族の思い出のために戦う老女だったし、
他の映画でも強く頼りがいのある女性の役が多いので、
「うぶで騙されやすそうな老女」のふりをしてたらしいけど、あんまりそうは見えなかったっす^^;