御堀端の帝国劇場にミュージカル『ラ・マンチャの男』を観に行きました。
客席には開演30分前にならないと入れないのですが、場内には1時間前でも入れてくれました。
普段来ない劇場なので、内装とか珍しくてうろうろ。
椅子もいっぱいあってよろしいなあと思います。
お話はご存知の方が多いと思いますが、
詩人セルバンテスが大勢の囚人がいる牢獄に宗教裁判を受けるために入れられる。
先に牢に入ってる人たちは新入りに難癖をつけるものなので、
それをなだめるためにセルバンテスは即興芝居を提案する。
セルバンテスのシナリオと演出で囚人たちが役を演じる。
その芝居がアロンソ・キハーナという老郷士の遍歴物語、ドン・キホーテ。
ドン・キホーテは自らを騎士と信じて旅に出て、風車と戦い、宿屋を城館と思いこむ。
この宿屋で働く女中アルドンザを気高き姫君ドルシネアと呼び、想い姫になってくれと頼む。
キハーナの家では叔父の失踪に姪のアントニアが気を揉み、
神父やフィアンセの精神科医カラスコ博士に相談する。
カラスコ博士の作戦が成功してキハーナは家に連れ戻され、遍歴の旅のことも忘れて臨終間近くなる。
そこにアルドンザが現れて、遍歴の旅は本当にあったことで、
自分はドルシネアとして生きていくと感謝を述べる。
芝居がそこまで進んだところでセルバンテスは裁判への呼び出しを受ける。
さくっとそんな話です。
7年前に観たときよりもアルドンザの生きてる世界がリアルに感じられて、
それは世の中が悪くなったからじゃないかなあと、ちょっと複雑な気持ち。
それでも最後にアルドンザがキハーナの元に駆けつけて、
自分は「ドルシネア!」と名乗るところがとても力強くて、
だからここの現実の世界の囚人たちは、このあとアルドンザではなくドルシネアの世界で生きることができるかもしれないと希望を感じるのでした。
白鸚のドン・キホーテ/セルバンテスは、実年齢はもうドン・キホーテに十分なのに、
瀕死のキハーナからセルバンテスに戻るところでパッと若返って中年になるのがやはり見事。
上条恒彦の牢名主/宿屋の主人や駒田一のサンチョとの掛け合いは前回と同様に安定してて自然。
アントニアが7年前の松本紀保から松原凛子、女っぽいアントニア。
アルドンザ/ドルシネアが松たか子から瀬奈じゅん、カッコいいアルドンザ。
私は宝塚はテレビで少し観たことがあるくらいなのですが、
(そして生舞台は遠い昔に一度だけ)
アルドンザを演じる瀬奈じゅんを観ていると、男役の人のカッコよさがわかるような気がしました。
声も低いし、乱闘の立ち回りも強そうだし、肩が開いてて逞しい立ち方だし。
姫様というより若君みたいな新鮮なアルドンザでした。
そういうアルドンザが「自分がドルシネア姫?」ってなっていくのもおもしろいです。
で、ラ・マンチャの感想から脱線するけど、宝塚の男役と歌舞伎の女方って「らしさ」の追求というか、
身体への叩き込み方がすごいんだなと思った次第です。
アルドンザを女方で想像すると誰が似合うだろうなあ?
アンコール含めて約2時間半、あっという間でした。
「苦しみを勇気に 悲しみを希望に」白鸚さんがよく言う言葉ですが、
劇中の囚人たちにセルバンテスはこれを与えて裁判へ赴いたように思います。
劇中劇では宿屋に集まる連中はアルドンザひとりが「気高い」世界を目指すことを許せなかったようですが、
囚人たちはそうはならないだろう、という予感を与えてくれるラストでした。
思いがけず観に行った日が上演1300回の特別アンコールの日でした。
台風のために日がずれてたようです。
アメリカから来たNYでアントニアを演じてくれたミミさんという方が客席にいらして、
はるばる来てくださったお礼にと白鸚さんは英語の Impossible dream をドン・キホーテの槍を持って大熱唱。
最後は両袖から金色のリボンが噴き出す素晴らしい時間でした。
希望も勇気も、そして憧れと感謝を感じる舞台でした。