是枝裕和監督の映画『真実』をやっと観てきました。
封切りすぐにも観たい映画だったのに、風邪で久しぶりに発熱。
それで出遅れてしまいました。
大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)が自伝本を出版することに。
出版祝いとしてアメリカ在住の脚本家の娘・リュミール(ジュリエット・ビノシュ)がアメリカ人の夫でテレビ俳優のハンク(イーサン・ホーク)と7歳の孫娘シャルロットを連れて帰省する。
そこで本を読んでみると…
「ママ、あなたの人生、ウソだらけね」ってことになります。
さてこの母娘に何があってどうなるのか?
CMや予告から、ファビエンヌがいったいどんな嘘を書いて、
それがどういう風に娘のリュミールを怒らせたのかな?と思いながら観ました。
でもその本はきっかけにすぎず、そのときそのときに話し合う時間があればよかったのにね、な
大女優の家でなくても、わりとありそうな話でした。
リュミールが傷ついたのは書かれたウソより、書かれなかったホントなのでした。
舞台がパリのお屋敷と映画スタジオ(ファビエンヌは最新の映画撮影中)、
美しい秋のパリ、お洒落なお店、SFっぽい劇中劇、ゴージャスなドヌーブ母、知的なビノシュ娘。
そして耳に心地よいフランス語の響き。
(フランス語はウイ、ノンしかわからないのでひたすら響く)
これらを使って「あるある」な話がどこかお伽噺めくところが、
映画の中で何度も出てくる言葉「魔法」によって、
素敵な特別なお話になってるような感じがしました。
ファビエンヌは美しいのはもちろんのこと、強いし、可愛いし、とてもチャーミング。
年齢が年齢なのでどこまでが性格で、どの辺が年齢のせいかよくわからなくて、
でもそういうのって悪くないなと思います。
母と娘といってもどちらもオトナで、本の内容を巡ってのやりとりも、
どちらも言いたいことは言うけれど抑制されているので、いいなと思いました。
どっちかが叫び出すかと思ったけど、礼儀正しいゲームを観ているようでした。
子どものころのリュミールは母との時間があまりないし、
子どもに親はとても大きく見えるし、何より特別な人だから、
いろいろ言いたいことも言えずにじっと考えていたのでしょう。
リュミールは母とは正反対の地味なファッションで、雰囲気も似ていないのだけど、
二人で何かをしようとするときの息の合い方や、芯の強さはやはり母娘なのだなと思います。
自伝本の内容を巡っていささか騒動は起こりましたが、
この本のおかげで母娘はより近しくなれました。
過去の何かが嘘かホントかよりも、今、寄り添えてよかったね、です。
ファビエンヌの撮影見学に来た孫のシャルロットが、
その映画に出ているフランスの子役に自分はアメリカの子役だと嘘をつきます。
するとちょっと見下した感じだったフランスの子の態度が変わります。
そのときのシャルロットの悪戯っぽい顔がおばあちゃん譲りのようです。
シャルロットの将来が楽しみです。
登場人物の会話の中に何度も出てくるけど、本人は出てこないサラというファビエンヌの友人の女優。
リュミールは母に替わって自分にあれこれしてくれたサラを慕っていて、
自伝本にサラのことが書かれていないのを非難しますが、
ファビエンヌにとってもサラは大事な人で、彼女を喪ったことに痛みを感じていました。
オトナになった今のリュミールには、今回の再会でそれもわかるようになりました。
劇中劇はとてもおもしろかったです。
そして切なかったです。