梅丸改め莟玉(かんぎょく)披露をはやく見たくて、初日に行ってきました。
大間や客席でご挨拶なさっている梅玉夫人、いつもシャキッとした方ですが、
一段とにこやか晴れやかにお見受けします。
梅丸くんが浅草に出ると、ほかの役者さんの受付には番頭さんが黒い服で並んでるところに、
ひとり着物で立ってご挨拶をされている梅玉夫人を何度もお見かけしたものでした。
梅丸くん、大事にされてるなあと思ったものです。
この「おかあさま」にもこれからの活躍で親孝行してほしいものです。
さてお披露目演目は「鬼一法眼三略巻 菊畑」。
平家方と目されている鬼一法眼(芝翫)の館に、「虎の巻」を奪おうと、
虎蔵こと牛若丸(莟玉)と智恵内こと鬼三太(梅玉)が使用人として潜入。
そこの娘・皆鶴姫(魁春)は虎蔵に恋をして父を裏切っても味方になってくれるという。
邪魔をする淡海(鴈治郎)をやっつけて、さあ虎の巻を奪いに行こう!という話。
劇中、五人が庭に揃ったところで襲名披露の口上があります。
いつもよりゆっくり述べる梅玉さん、いつもより雄弁に聞こえる魁春さん、
「小さいころから芝居が好きな変った子だなあと思ってた」とニコニコの芝翫さん、
「うちの壱太郎と同じように可愛いがってきた」とこれまたニコニコの鴈治郎さん。
この四人の中ではまだまだ小さく細い莟玉さんですが、
端正でお行儀よく「精一杯勤めます」の挨拶は、大きな志を感じるものでした。
莟玉さんはこれで六世・歌右衛門の孫、というポジションになります。
梅玉・魁春兄弟は歌右衛門の奥さんの子どもたちで、血のつながりはない子どもです。
歌舞伎は今は血筋の子が継いでいくもの、と思われてるのかな?ということがありますが、
ここのおうちにはぜひ「芸」を継ぐ、「風」を継ぐのは血に頼らないってところを見せてほしいと思います。
「菊畑」幕切れの知恵内・虎蔵・皆鶴姫の見得がとても美しく、
これが絢爛豪華な歌舞伎の絵だわ~とウットリです。
この三人の舞台写真が出るといいなあ。
一生懸命な莟玉さんもよかったですが、
梅玉さんの知恵内がものすごくカッコよかったです。
梅玉さん、こういう役も素敵なんですね。
ここでほぼ満足した夜の部ですが、次は高麗屋父子の「連獅子」。
染五郎くん、まだ中学生ですが、背が伸びてお父さんより高くなったかも。
幸四郎さんも白い顔すれば二枚目な人だけど、息子が綺麗すぎてついつい子獅子を観てしまう^^;
連獅子の衣裳は家々で色合いや柄が少しずつ違うのだと思いますが、
今回のは狂言師父子の着物の色合いが茶色っぽくシックな色合いの市松に、
牡丹の花の色も渋くて綺麗な色だったので染五郎くん、いっそう大人びて見えるような。
染五郎くんの獅子というと、三代で踊ったのを観て以来。
あの時はまだ6歳くらいだったっけ?
小さな金太郎(当時)ちゃんを目の端に置きながら踊る染五郎(当時)パパでした。
今回はもう厳しい獅子の精の父親そのものです。
最後はついて来ないなら置いてくからな!な毛ぶりで幕。
二幕続けて豪華で綺麗な衣裳を楽しんで、最後は池波正太郎原作「市松小僧の女」。
原作を知らないし、市松小僧の女ってどういう意味だろう?くらい何もわからないまま観たら、これもおもしろかったです。
チラシやポスターに載ってるヒロインらしい時蔵さんの写真が、今まで見たことがないような雰囲気なので不安だったのですが…
千代(時蔵)という大店の長女は先妻の娘。剣術好きで女らしくない。
後妻(秀調)は自分の娘お雪(梅枝)に婿を取って店を継がせたい。
主人・重右衛門(團蔵)は長女に継がさなければ店に乱れが出ると、
親戚の息子(萬太郎)に婿になってくれろと頼んでいる。
千代は結婚して跡継ぎになるのはいやなので、乳母のおかね(秀太郎)のところへ家出する。
そこで市松小僧又吉(鴈治郎)という巾着切りと知り合って…という話です。
家出した千代と主人との間を行き来する優しい大番頭(齊入)や、
道場の兄弟子である同心(芝翫)、千代を庇うおかねなど、
実家の居心地はよくないけど、千代の周りには温かい人たちがいます。
千代もカラッとして気立てのいい女なのです。
今後の彼らはどうなるのか?が気になる終わり方ですが、
幸せになるよと信じてあげたら、幸せになると思う。
こういう芝居を見たときに「きっと幸せになるよ、なれるよ、頑張れよ」、
そう思える現実の世の中であらねばなあと思います。
十手を持った同心の芝翫さん、こういうのすごく似合いますね。
そんなわけで、絢爛豪華な源平時代の京都、いつだかわからないけど(法然よりはあとか)のどこかわからない(インド方面か)清涼山から、
一気に江戸時代の神田から深川あたりまで戻してもらって、
そこから現代の銀座4丁目の外に出ました。
莟玉・染五郎の若い二人の効果もあるでしょうけど、
流れとして清々しい夜の部だと思います。