今回は夜の部は「堀川波の鼓」をお目当ての南座でした。
仁左衛門が出るってのもありますが、この近松門左衛門の姦通劇と言われる芝居、
これまで私は知らなかったのです。
今年の夏、大坂の若手勉強会でこれを仁左衛門が指導したって話を聞いて、
「ふーん、どんなものなんだろう?」と思ってました。
そしたら本人が顔見世でかけるというので大喜び。
ところが観てみたら、仁左衛門の彦九郎という不倫される夫の出番は二幕からで短いのでした。
出番は少ないけどとっちらかってしまった状況をひとつのセリフでまとめてしまう、
その場面は圧巻でした。
相手に惚れてしまったわけでもないのに、不倫しちゃう妻・お種(時蔵)のあぶなっかしいけど可愛い奥さんぶりとか、
夫の留守に付け込んでお種となんとかと画策する同輩の磯部(亀鶴)のしょーもなさとか、
その気はなさそうに振る舞いつつ、あっさりやっちゃう鼓の師匠(梅玉)の妖しさとか、
真面目にお種を心配する若い妹(壱太郎)や養子(千之助)の、なす術のなさとか、
それぞれに「濃いわ~」「切ないわ~」と大層ドラマティックなお話でした。
重いっちゃ、重い話です。
(Twitterでの未確認情報ですが、年末のNHKでこれ放映されるかも!)
しかし次の「釣女」ですぐに気分転換。
西宮の戎神社にお参りして妻を娶ろうと思い立った大名(隼人)と、お付きの太郎冠者(愛之助)。
夜通し祈願するつもりが居眠りしてしまうのですが、そこに夢のお告げで西の門へ行く。
西の門には釣り竿があったので、その釣り糸を投げてみると…
なんと大名の釣り糸の先に美しい上臈(莟玉)が!
大名大喜び、上臈も同意して二人はさっそく三々九度と祝いの舞。
隼人&莟玉、サスケの可愛いカップルのおでこツン!を思い出します。
これを見て羨ましい太郎冠者、自分も釣り糸を投げてみると…醜女(鴈治郎)が糸の先に。
なんか舞台の半分では松羽目らしい美しく優雅な舞が行われてるのに、
あとの半分は背景こそ松羽目だけど「らくだ」観てるみたいだ(笑)
愛之助、本来二枚目だけど、大名が引き立つようなとぼけた兄ちゃん風、
そこに醜いというよりも…異世界から来た!?みたいな漫画みたいな不思議ちゃんな鴈治郎。
ちょっとパンダチック。
すごい破壊力の醜女で、また場内もすごく受けがいいです。
私もすっかり「堀川波の鼓」のことは忘れて笑いました。
これ、東京でもこれだけ受けるかなあ?南座の間口だからいいのかもしれません。
散々笑って、次はまたシンミリする「魚屋宗五郎」。
磯部家に奉公にあがってた娘・お蔦を不義の罪を着せられて殺された魚屋の宗五郎(芝翫)一家。
お悔みにきたおなぎ(孝太郎)に経緯を聞けば、お蔦は濡れ衣を着せられて殺されたらしい。
宗五郎はあまりのことに、おなぎが持ってきた酒を禁酒の誓いを破って飲んでしまう。
宗五郎、酒乱だったんですね。
一口だけ、がどんどん進んで樽を開けてしまう頃には思慮は何処かへ行ってしまい、
女房おはま(雀右衛門)が止めるのも聞かず磯部屋敷へ殴り込みをかけてしまう。
結局、悪人の陰謀は発覚し、殿さまは宗五郎夫婦に謝って
「悪人滅びて善人栄える」で終わるハナシ。
毎度のことですが、この殿さまってなんだよ…あんたも悪人だよ。
雀右衛門のおはま、すごくしっかり者のおかみさんに見えました。
可愛い娘や姫、耐えるお母さんや奥さんみたいな役の多い雀右衛門、
ふつうの魚屋のオバサンをちゃきちゃきやってて楽しそうに見えました。
宗五郎を追いかけて、櫛をくわえて花道を引っ込むところ、カッコよかったです。
最後が最高のデザートみたいな「越後獅子」。
角兵衛獅子というにはちょっとお兄さんな4人(隼人・橋之助・莟玉・千之助)が、
日本橋で富士山を背景に元気に爽やかに踊ります。
鞨鼓を叩いたり、一本歯の下駄を踏み鳴らしたり、長い晒を両手に持って舞台いっぱいに翻したり。
晒しは一本一丈五尺(約4m50cm)あるのだそうです。
それが舞台いっぱいに翻っているのを見ると、邪気を祓っているようです。
ほんとうに清々しい!
年納めの演目はやはり清々しいものがいいなあと思いました。
終わりよければすべてよし。