金曜日の夜のChaplin KABUKI NIGHT公演で『蝙蝠の安さん』を観ました。
喜劇王チャップリンの名作「街の灯」が初上演されたのが1931年の1月だそうです。
その半年後に評判を聴いた木村錦花が海外で「街の灯」を観た役者の話や、映画雑誌の筋書きをもとに、歌舞伎版を書いて8月に上演。
日本で「街の灯」が公開される前のことだったそうです。
「街の灯」のチャップリンが演じた浮浪者を、錦花は蝙蝠の安さんと名付けました。
頬に蝙蝠の彫物がある、「世話情浮名横櫛」の蝙蝠安になぞらえたようです。
舞台はロンドンから江戸下町へ。
川はもちろん隅田川。
妻に死なれて傷心のあまり飛び込もうとする大店の主・上総屋新兵衛(猿弥)を助けた安さん。
眼病で目が不自由な花売り娘・お花(新悟)を見かけ、全部買ってあげる安さん。
お花は安さんを「お金持ちの旦那さん」と勘違いしてしまいます。
お花の家の外で立ち聞きして、五両あればお花の目の治療ができると知って金策をする安さん。
懸賞相撲に出てみたりしますが、まさかの負け方。
新兵衛は夜、酒を飲むと安さんを命の恩人の飲み友達として大歓迎してくれるのですが、
酒が覚めると飲んでる間のことは忘れてしまう。
それでも新兵衛に五両頼んで都合してもらう安さん。
案の定、酒が覚めたら覚えていない新兵衛に訴えられて、手先に追いかけられる安さん。
それでもなんとか、お花にはお金持ちのふりをして五両渡すことができました。
お花は治療がうまくいって、浅草参りの人でにぎわう場所に花屋を出せるようになりました。
それをじっと見ている安さん。
旦那さんとも知らず、声をかけるお花。
日光へ行くという安さんにお餞別をあげようと言ってくれるけど、
安さんはお餞別はいいから花をくれという。
菊の花を渡すとき触れた手で、お花はその人が誰だかわかって驚くが、
そのとき安さんはもう歩きだしているのでした。
幸四郎のチャップリン愛にあふれた、笑って笑ってホロリとする話でした。
安さん、可愛い、愛らしい、ラブリーすぎる。
これから「世話情浮名横櫛」を観るとき、困るじゃないか(笑)
新兵衛を助けようとして川に落ちてしまった安さんと新兵衛のやりとりや、
相撲に出ることにしてしこ名を考えるところなどは日替わりでいろいろあったようです。
私が見た日のしこ名を考えるところは「はくおう」「はくほう(白鵬)?」「はくおう(白鸚)、まだ早いか」からの「蝙蝠男バットマン(だったと思う)」でした。
両腕を広げるバットマンポーズ付き。
筋書きに「この話はハッピーエンドかどうかは責任持ちませんよ」という幸四郎のコメントが載っています。
お花が動揺したまま、安さんは去って行ってしまうのですが、
このままお花がまっとうに生きてくれればハッピーエンドなんじゃないかなあ?
寅さんみたいな終わり方だなと思いました。
安さんはいいことがあったり、なかったりしながら、しぶとく生きてくれそうです。
哀愁漂う浮浪者というには幸四郎はまだ若くて美形なので、
もっと年取ってからまたやってみてほしい。
幸四郎以外の人でやってみてもいいなと思う芝居でした。