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ほとんど観た歌舞伎の話

鏡餅は片づけられちゃいましたが、まだ門松や大間の飾りのあるお正月の歌舞伎座。
まだウキウキした華やかさがあります。

夜の部は、まず「義経腰越状 五斗三番叟」から。
初めて観るお話なので、どう展開するのか何が出るのか楽しみです。
御殿に黒い奴さん風の男がやってきます。
前後を深編笠で顔を隠して踊る男たち(雀踊りというらしい)に囲まれ、邪魔されつつも、それを退け退けやってきます。
若々しい忠義の男という風情なのが亀井六郎(猿之助)。
館にいるのは鎌倉に入れてもらえない義経(芝翫)。
ってことで、ここは腰越ということになるようです。
頼朝が会ってくれないので遊興にうつつを抜かす義経を六郎が諫めるのですが聞き入れられない。
そばにいる錦戸太郎(錦吾)と伊達次郎(男女蔵)兄弟が悪いやつらで、
義経を陥れようとしてよい人たちを遠ざける画策をしているらしいです。

次に泉三郎(歌六)という白塗りのスッキリした、六郎よりオトナな人が出てきて、
いい軍師を見つけたからと六郎を宥めて帰します。
その軍師として呼ばれたのが目貫師の五斗兵衛(白鸚)。
酒飲みの評判があるので、太郎・次郎兄弟は酒で失敗させてしまおうと企みます。

初めは「大事のお目見え済むまでは」と勧められた酒を固辞する五斗兵衛でしたが、
太郎・次郎のすすめ方がうまいのと、酒そのものもいい酒らしく、ついに盃を手に取る五斗兵衛。
ひとたび呑み始めたら、もう止まらない。
次から次から運ばれてくる酒を、どんどん呑みほしてしまう。
肝心のお目見えのときはもうデロデロで、義経はまた機嫌を損ねて引っ込んでしまう。
このお芝居では義経はまるで義経じゃありません。
そう、義経・頼朝の対立に話を借りて、秀頼・家康のお芝居をしているのです。
五斗兵衛は後藤又兵衛、泉三郎は真田幸村だそうです。
ごろりと寝てしまった五斗兵衛、起こって引っ込む義経を見て、太郎・次郎はうまくいったと思ってる。

けれども五斗兵衛、すべてはフリでした。
え~、あれだけ呑んで!?
太郎・次郎は竹田奴たちに五斗兵衛を叩きだすように命じて引っ込みます。
竹田奴、それぞれおもしろい顔に拵えた下僕たちで、
私は今まで「壇ノ浦兜軍記」で阿古屋を挟んでチキチキチキチキと出てくるのしか観たことがありません。
目の位置がありえないだろ?な奇天烈メイクから、動物っぽいの、時代と場所が変ればふつうかも?まで様々で楽しいです。
竹を打ち鳴らしたり、箒を持ってきたりして五斗兵衛を追い出そうとしますが、
起きた五斗兵衛は彼らでお正月遊びを始めてしまう。
凧あげ、トントン相撲(紙の力士を動かす遊び)など、「おお、あれ!懐かしい」と思いましたが、
若い人にもわかるだろうか?
飄々と竹田奴を操る五斗兵衛。
白鸚さんは襲名してからいっそう軽やかになったなあと思います。
裃の肩衣をアレンジして三番叟のようないでたちになり、
最後は竹田奴を馬にして、酒樽を馬の頭に、花道を駆け去っていきました。
愉快で楽しい演目でした。

続いて「連獅子」。

今回は猿之助の親、團子の仔。
澤瀉屋、狂言師の衣裳が色がスッキリしててシャープ。
そして澤瀉屋の連獅子は動きが多く激しく見ごたえがあると聞いていましたが、
まさにその通りでした。
團子くんは弥次喜多には出ていたけど、踊るのを観るのは「鏡獅子」の胡蝶以来?
すっかり背が高くなって、中車・猿之助より高そうです。
手足が長いのはカッコいいとはいえ、長い分扱うのが大変そうでもある。
腰を低く落とすのとか大変そう。
それでも凛々しく親に向かっている姿、その仔を観る親の余裕ある眼差し、
獅子の教育とは英才教育なんだなって感じの連獅子です。
前シテも後シテも華やかで敏捷で、猿之助にしっかりついていく團子くんに目をみはるばかりでした。

幕になってからの客席の興奮もすごかった。
そういうことも含めて素敵な「連獅子」でした。
團子くんの踊り、これからも楽しみです。

最後はテレビ中継もされた「鰯売戀曳網」。
三島由紀夫の作品です。

鰯売りの猿源氏(勘九郎)が一目見かけた傾城・蛍火(七之助)に一目ぼれ。
父親や仲間が手助けして、猿源氏を大名に仕立てて蛍火の店へ送り込む。
宇都宮弾正と名乗る猿源氏の衣装が桃色と空色という可愛い色合いで、
蛍火は白地から裾にかけて朱色になっていく山模様の打掛で、
それだけで新春らしい、明るい、いい気持ちになってきます。
赤い着物の可愛い禿ちゃんは長三郎くん。
猿源氏にはたかれて、睨み返すおませな顔が可愛い。

大名という触れ込みでお座敷に通された猿源氏、軍物語をせがまれて、
(ここで義太夫の用意もされてしまって)
やむをえず語る鯛とヒラメとタコの合戦記。
なかなか楽しい場面ですが、勘九郎のは迫力もあります。
ビチビチ跳ねる魚を想像してしまいました。
討ち死にする鯛が、懐胎した妻の子たちに会うことができずに残念~みたいな件があって、
鯛の子ってどんだけいることやら、全部に会って認識したいのか!?と突っ込みつつ、
でもその無念の想いに泣き笑いしそうになる。

寝言から身分がばれる猿源氏ですが、
実はその鰯売りの声に焦がれて城を家出して、今ここで傾城になっているという蛍火の告白。
お互い知らずに相思相愛だったというめでたさ。
しかもこの店に姫の両親の家来・次郎太(種之助)が、姫を連れ戻すために見受けの金も持って潜入していたというよくできたお話。

勤めを果たせず釈然としない次郎太以外は、みなよかったよかったな笑顔で終わる。
初芝居はやっぱりこういうのがいいな、と。