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ほとんど観た歌舞伎の話

今年は暖かいので梅の花も、もうあちこちで見かけます。
その季節にふさわしい演目「菅原伝授手習鑑」から「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」が今月の昼の部。
三月が御命日で二十七回忌にあたる十三世片岡仁左衛門追善興行となっています。

十三世の長男・我當は夜の部のみ、三男・仁左衛門は昼の部のみ、次男・秀太郎が昼夜に出演。
長男の子、進之介は我當と夜の部、三男の子、孝太郎は仁左衛門と昼の部、そのまた子どもの千之助が昼の部で大役・苅屋姫。
残念なのは秀太郎の養子・愛之助の不在ですが、「一番売れてるから(by仁左衛門)」^^;
でも初日の夜の大河ドラマに今川義元でちらっと顔を見られたので、よしよし。

牛が座り込んだ牛車のある加茂堤。
桜丸(勘九郎)・八重(孝太郎)夫婦はその牛車の中で斎世親王(米吉)と菅丞相の養女・苅屋姫(千之助)をデートさせてあげます。
お雛様のように可愛い二人のデートに、自分たちも盛り上がる若夫婦。
長閑でおおらかな、春らしい雰囲気です。
けれどもそこに暗雲漂わせる時平の家来の登場。
桜丸が追い払いますが、その間にお雛様たちが牛車から逃げ出して何処かへ行ってしまいました。
慌てて探しに行く桜丸、残された牛を頼まれ、牛を動かそうと頑張る八重。
このことが発端で菅原道真は大宰府に流され、怨霊となって、天神さまとして祀られることになります。
そんなこととは、まだ思えない、梅の花咲くうららかな加茂堤なのでした。
勘九郎、きびきびした桜丸です。
おっとりとろとろ歩くお雛様カップルにすぐ追いつけそうでした。

続いて「筆法伝授」。
菅丞相(仁左衛門)は52歳なのだそうです。
なのでもう跡取りを定めて、菅原の家の筆法を伝授せよと帝の命です。
それを知って希世(橘太郎)という公家の弟子が我こそはと張り切りますが、
人格も腕前も到底伝授にふさわしい人ではありません。
相手をしなきゃならない局(秀調)や腰元(莟玉)もイヤそうにしていますが、
希世は一向に気にせず自分に筆法伝授をとアピールしています。
困った希世ですが、この人がいるので時々笑えて話が重くなりすぎずにすみます。
伝授の相手として呼ばれたのが武部源蔵(梅玉)戸浪(時蔵)夫婦。
この二人は菅丞相家の旧臣と腰元で、不義を理由に勘当を受けたのでした。
まずは園生の前(秀太郎)が優しくその後どうしていたかと声をかけてくれます。
涙にくれる源蔵夫婦。

勘当はしても腕前が確かなら筆法伝授はしてもらえる。
菅丞相の前へ出て、希世の邪魔をかわしながら、見事に筆法伝授を受ける源蔵。
けれども勘当は解いてもらえませんでした。
そのうえ、菅丞相は朝廷から呼び出しを受けて出かけてしまいます。
そして戻った時は謀反の罪で流罪、閉門となりました。
養女・苅屋姫と斎世親王を結婚させて外戚となろうとする陰謀だとの言いがかりでした。
お雛様のデートがこんな事態に発展してしまったのでした。
これではまだ七歳の菅秀才の身も危ない!
というわけで、勘当されてるんだから、暴れたって菅丞相家には関わりないと、
梅王を制して源蔵夫婦が時平の家来と戦い、管秀才を連れ出して去っていくのでした。
源蔵、希世の邪魔をかわすところといい、時平の家来と戦うところといい、強い!
ただの寺子屋の先生じゃなかったのですね。
動きの少ない仁左衛門@菅丞相はその佇まいから、ちらっと動くときに発するオーラがすごい。
動きのある梅玉@源蔵は貧しい身なりでも颯爽としてカッコいい。
どちらも素敵です。

そして「道明寺」。
大宰府へ向かう途中の道明寺の伯母・覚寿の家に菅丞相は逗留が許されました。
ここには覚寿(玉三郎)、上の娘・立田(孝太郎)、下の娘・苅屋姫がいます。
立田は結婚してて宿禰太郎(彌十郎)という夫がいます。
宿禰太郎はそんなにあくどい人ではなさそうですが父親の土師兵衛(歌六)は褒美目当てに時平側についてしまいました。
太郎は父親のいいなりです。

この大事の張本人、苅屋姫は猛烈に反省中です。
そしてせめて菅丞相に一目会いたい、それを姉の立田も叶えてあげたいのですが、
とーーーっても厳しそうな老母・覚寿がそれを許さない。
菅丞相は伯母へ自分の形代としての木像を彫ってあげています。

いよいよ明日は菅丞相が出立する夜、土師父子は裏切り計画を立田に聞かれてしまいます。
口封じに殺され池に投げ込まれる立田。
菅丞相は偽迎えに連れていかれてしまいますが、ここから不思議なことが起こります。

ここでも仁左衛門@菅丞相は出立まで静の演技を続けます。
周りの人たちがあれこれ動いて、話がどんどん展開します。
真ん中で大活躍なのが一家を仕切る玉三郎@覚寿。
すごい迫力です。

そしていよいよ菅丞相の出立の時。
覚寿がそっと臥籠に忍ばせた苅屋姫と面会させようとするけれど、
顔を合わさず出て行こうとする菅丞相。
それでも心は一目会いたくて仕方がないから、鏡を見たり、池の表を眺めたり。
我慢できなくなった苅屋姫が縋り付いても、顔を背けて、そっと扇を渡す菅丞相ですが、
最後に一度だけ袖を巻き上げ顔を姫に向けるのでした。
この顔を正面から見ることができるのは舞台の上の覚寿と苅屋姫だけなのですよね。
様々な感情を押し殺して座っている覚寿、
ただただ悲しく心許なげに見送る苅屋姫。
素晴らしい幕切れでした。

千之助、いずれおじいさんの当たり役をやっていくのだから立役になるのだろうと思っていたので、
苅屋姫を配役されたと知った時は驚きました。
子役時代しか女の子の役みたことないし。
ただ本人はまだどっちか決めていないと言っていたし、曽お祖父さんの追善です。
初日が終わっての孝太郎さんブログの写真を見ると、
お父さんとしてもOKな苅屋姫だったのではないかと思います。
(楽屋が秀太郎さんも一緒って楽しそう!)

重い話ではあるのですが、ところどころにクスッと笑える場面があって、
観終わるとけっこう「楽しかったな〜」と思える芝居でした。