JR東海HC85系(普通車) | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

JR東海管内では「ひだ」「南紀」の2系統の非電化特急列車が運行されており、JR化直後は国鉄から引き継いだキハ80系を使用し、平成に入ってからはJR東海初の新製特急型気動車、キハ85系を投入し、大幅な所要時間短縮を実現しました。しかし老朽化も否めず、令和の非電化区間の顔として、新たな特急型車両を登場させました。それがHC85系です。

 

起動時は蓄電池に貯めた電力を使用して加速し、ある程度加速するとディーゼルエンジンで発電した電気でモーターを回すいわゆる電気式ディーゼルカーとなる、ハイブリッド方式の車両となります。おでこの部分には照明が仕込まれており、白・赤に光ります。キハ85系にあったサンルーフのリスペクトと言った感じでしょうか。なおJR他社ではこの手の車両は気動車としてまとめていますが、JR東海は独自に突っ走っており、「モーターを回すから電車」という整理なんだそうな…。

 

JR東海の在来線車両にしては珍しくロゴが入っています。315系もそうですがステンレス車体にして非常にツルンとスッキリした車体、技術も進むものですね。ハイブリッド車両としては国内で初めての特急型車両、2023年のブルーリボン賞にも輝きました。

 

高山本線の「ひだ」に先行導入され、2023年度より「南紀」にも導入されます。両列車ともにJR西日本区間へも乗り入れ、この通り大阪駅にも顔を出します。

 

行き先表示はこの通りフルカラータイプのLED表示機となっています。繁忙期では自社管内で10両編成での運転が引き続きある一方で、JR西日本区間へはかつてキハ85系が3~4両で乗り入れていたのに対し、この系列になってからは2両で各線へ突っ込むことも…。おかげで回復したインバウンド需要に対応出来ず、阿鼻叫喚の混雑になる日も多々あるそうな…(上のように、繁忙期には4両となります)。今回はそんなJR西日本にも乗り入れる普通車をご紹介。

 

それでは参りましょう、まずはデッキ、ドアからです。JR東海の車内イズムを知っていると、これだけ木目調の化粧板を貼ったデザインで出してきたのはかなり意外と言えるかもしれません。ドアの窓は外側に膨らむように緩いカーブを持たせたものになっています。

 

足元を見ますと、わずかですがステップが残っています。そしてキハ85系のDNAが生きていますね、ステップの先にはマットが設置されています。

 

バリアフリー対応車両はドア幅が広げられています。ドア上には開閉ランプと防犯カメラが設置されています。

 

くずもの入れは飲料系とその他で分別されています。何気に黒縁なのは珍しいような気がします。

 

区画によってはそれぞれ通路を挟んで設置されています。ここは左側に消火器も備えていますね。ドア横の握り棒は壁に埋め込むように設置しており、急停車時にブツけても極力ケガをしないようにしています。

 

非常通話装置と非常灯、それぞれステッカーで表示しています。木目調化粧板なだけに、ちょっと野暮ったさがあります。

 

トイレです。男女共用と男性小用が並びます。男女共用トイレにはベビーベッドやベビーチェアも備えられています。

 

洗面台です。蛇口、ハンドソープなどの口が一体的になったスグレモノです。鏡は照明を仕込んスタイル、最初はJR西日本がよく使うスタイルでしたが、近年は各社で採用されつつありますね。

 

バリアフリー対応トイレです。ええ、ピクトグラムがいっぱい並んでいます(^^;; 

 

向かい側の壁は、トイレの形状に合わせてカーブを描いています。ここにはAEDがありますので、知っていると人を助けられるかもしれません。

 

洗面台です。車椅子でも利用できるよう設計されています。鏡は三面鏡になっています。そうそう、一部デッキは「ナノミュージアム」と呼ばれる沿線の伝統工芸品を展示するスペースがあります。ちょっとJR九州っぽいですね。

 

奥には男性小用があります。なんかこの配置はどこもお馴染みですね。

 

最前面です。ワイドビューなんて言ってたのはもはや過去、増解結を考慮してほぼ壁になっています。一応仕切り窓から前面展望も出来ますが、見たとしても貫通扉が両開きのプラグタイプなのでよく見えませんし、夜間は遮光幕が降ろされるんでしょうね。

 

デッキとの仕切り扉は窓が半透明になっています。

 

いよいよ車内です。JR東海では313系8000番台以来の暖色系の色使いとなっています。

 

デッキとの仕切りです。化粧板は木目調ながら、仕切り扉はグレー系を使用しています。旅客案内はLCDディスプレイ、縦幅はN700Sと同程度ながら、横幅は車体の制限もあってか狭くなっています。

 

バリアフリー対応車両については仕切り扉が両開きとなっています。荷物置き場が両側に配置されており、大型の荷物の持ち込みも安心です。そうそう、ハイブリッド車両ということで、LCDディスプレイでは走行エネルギーがどれから供給されているかを表示するアニメーションも流れます。

 

天井です。間接照明ながら必要十分な照度を確保しており、さらに中央の天板は立体的な造形にすることで、「魅せる」という機能を追加しています。実用性最優先のイメージがあるJR東海にして、ここまで芸術的な形で持って来たのにビックリです。

 

窓です。2席に1枚の割り当て、日除けは今の時代にしては珍しい横引き式です。おかげでカーテンレールを挟まないため、窓の後列は大窓で景色を楽しめます。

 

柱には帽子掛けがありまして、跳ね上げ式になっています。

 

座席です。座面からヘッドレストにかけてグラデーションを描いたデザインのモケットで、白いヘッドレストリネンとしっかりマッチしています。

 

「N700Sと同じ座席」といくつかの方面から言われているようですが、リクライニングレバーはN700Sのそれですが、アームレスト後部に模様を施す処理をしていたり、N700Sにあったヘッドレスト横の張り出しも省略されています。イメージとしてN700Sに通じる部分がある座席と捉える方が適切かと思います。

 

全席にコンセントが設置されています。リクライニングレバーのすぐ下にあり、手元に電気があるという点で濡れ手では少々怖い気がします。とは言え、ディーゼルエンジンをエネルギーとする車両で全席にコンセントを設置出来たのは快挙と言えるでしょう。

 

デッキ仕切り際の座席はいわゆるオフィスシートで、テーブルが大きくなっています。この座席、バケットが緩めの座面で、臀部をどこに落として欲しいのかが明確になっていないのはイマイチにも感じます。またクッションはかなり硬めなので、「想定された」であろう座り方をしないと一気に疲れが出てきます。その硬めのクッションながら座面がやや高めなので、太もも裏へ疲れが残る設計だと思います。メーカーや会社からしたら「高さは従来車とあまり変わっていない」と言い訳を宣いそうですが、従来車はクッションの沈み込みを想定してそうなっているのであって、クッション硬めである前提ならその分は差し引いて設計すべきであると思います。もしくは、こういう時にキハ85系のようにバーレストとかがあればいいんですよね、バッサリ省略されてますけど。

 

バリアフリー対応座席の前の席です。反対方向を向いた時にシートバックテーブルが無いことから、インアームテーブルが備えられています。センターアームレストに仕込む構造はJR東日本チックですが、あちらと違ってこの画像で言うところの窓側にしか備えられていません。サイドアームレストがコンセントなどの絡みで設計変更出来なさそうなのは理解しますが、利用の際に先客がいたら気まずいですよね。一応、通常は発券ブロックがかかっているようですが…。

 

バリアフリー対応の1人掛けです。近年の座席を窓側に寄せ過ぎ問題が各地で散見されますが、この系列では窓下のパネルを凹ませて肘周りの余裕を稼いでいます。が、窓枠の下辺を広げてテーブルの代わりとしている関係で、アームレストに肘を置くとこの窓枠下辺がガッツリ当たります。この辺はJR東海でずっとネックになっている部分なんですが、まだまだ完全解決には至らないようです。

 

全展開の図。肘掛けを跳ね上げることが出来るので、乗り移りも容易です。また固定用のベルトもありますね。そうそう、なぜかこの席のみ「指定席」の表示が付いたヘッドレストリネンが取り付けられています。この車両自体指定席車なので、わざわざ区別する必要も無いと思うのですが…。自由席車として転がされることもあるのでしょうか。

 

向かい側は車椅子置き場となっています。この辺りはN700Sの配置に似ています。一方で、コンセントは無いようですね。

 

荷物置き場です。二段式で、下段は通路への逸走を防ぐためセーフティバーがあります。