わたらせ渓谷鐵道 わ99形 | 車内観察日記

車内観察日記

鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

群馬県の桐生から栃木県の足尾・間藤までを結ぶ第三セクター、わたらせ渓谷鐵道。グッズの充実ぶりには目を見張るものがありますが、観光列車も中々充実しており、2種類の観光列車を保有しています。

 

その観光列車の元祖がこの「わたらせ渓谷号」という列車で、ディーゼル機関車が客車を牽引する典型的なトロッコ列車です。

 

ディーゼル機関車はJR東日本から購入したDE10で、この日は専用塗装化された1537号機が担当していました。寒冷地用に製造された機関車で、旋回窓を装備しているのが特徴ですね。

 

なお、1537号機が検査や不調に陥った時のため、後に1678号機が追加で導入されています。こちらは国鉄色のままで残されています。

 

2両のDE10を無理矢理(笑)  普段は専用塗装の1537号機が担当しているのでしょうか。

 

さて、毎度お馴染みメインはこちら、ディーゼル機関車の後ろにぶら下がる4両の客車です。

 

まずご紹介する両端の客車は元を正せば国鉄→JR東日本の12系客車で、わてつ移籍後は機関車同様あかがね色をベースにした塗装に変更されています。

 

反対側です。JRグループでは片側を運転台付き車両に改造の上ディーゼル機関車を遠隔操作する手法が取られていますが、わてつでは客車のまま利用されています。そのため機回しが発生するという手間と、それが出来ない起終点の桐生・間藤へ行けないというネックを抱えているのですが…。

 

何やらJRを思わせるロゴも入れられています。

 

方向幕は基本的にこれ。後述しますが時折変更される機会があるようで。

 

それでは参りましょう、デッキはドアからです。オリジナルの折戸式で残されており、バスタイプを除けば全国的にも数が少なくなってきたように思います。

 

少し色褪せてますが鉄道むすめを使ったポスターが貼られています。よりによって写真の牽引機は国鉄色のDE10…。

 

トイレはオリジナルの和式で残されております。消火器上のマガジンラックは後に追加されたものなんでしょうね。

 

洗面台です。各部のアイテムがオリジナルのまま残されている貴重な車両となっています。

 

というわけでまずは本体を。ボタンがふたつありますが、お湯が出るかどうかは分かりません。今の車両には見られなくなった痰壺もありますね。

 

で、左側を見るとドーンと冷水機が備わります。残念ながら使用は停止されて久しいようです。

 

こちらは反対側の車両のトイレ…なのですが

 

用具置き場として締切扱いとなっております。編成に一ヶ所あればいいんでしょうね。

 

向かい側の洗面台もロープで区切られています。

 

洗面台にも蓋がされ、「使用禁止」の紙が貼られています。それよりもですね、何よりもビックリしたものがここにはあるんですよ。

 

…この紙コップホルダー、まさかの紙コップが残されたまま存置されております。JRグループでもホルダーこそ残されていても中が空っぽなケースが多い中で非常に貴重な状態で残されています。ただ、ここのスペースは基本的に使用禁止処置がなされている場所、これも使用禁止と思っておきましょう。

 

車掌室を向いてみます。貫通路で結ぶことを前提としているため両側ともに半室構造とされています。

 

乗務員室です。こちらは国鉄時代のままですね。

 

中が開いておりましたので。車掌席はロングシートですね。

 

方向幕の操作盤です。現在は季節により幕を変えるための2~7番までしか使われていませんが、かつての行き先も操作盤上では健在でして、都城など九州の行き先まで入っていたのには驚きました。

 

で、その下には灰皿。かつては車掌さんも吸えたんでしょうね、今やれば一発アウトですが…。

 

DE10のお顔ドーーンと。

 

ようやく車内です(笑)  急行列車に使われていた当時の懐かしい姿で残されています。

 

デッキとの仕切りです。大間々駅では1両しか扉が開かないこともあり、乗り移りを考慮し開きっぱなしとされています。

 

天井です。付いているものは蛍光灯、クーラー、ベンチレーター、スピーカーだけと国鉄らしいシンプルさを地で行きます。

 

窓です。二段窓が並び、一応上下段どちらも開閉可能となっています。日除けは引っ掛けるロールカーテンタイプなのですが‥もう生地がヨレヨレ(^^;;

 

座席です。全席ボックスシートで、紺色のモケットを維持している貴重な存在です。

 

窓側にも肘掛けがあり、シートピッチも普通列車用と比べて広めで腰部分のクッションもやや厚めです。これこそが普通列車との料金格差と当時は言えたのでしょう。ここでノスタルジーに浸るのも悪くありません。

 

テーブルは急行型らしく変則六角形の固定式です。灰皿は撤去されていますね。

 

デッキ仕切り際の座席は仕切り扉の関係で横幅が切り詰められており、窓側の肘掛けが省略されています。

 

あじさいや紅葉の季節になると、このトロッコ列車に乗車するツアーも多く組まれることから、一部はこのように団体席としてブロックされます。このツアーによるブロックが、時に一般の通し乗車が出来なくなる要因のひとつになったりするのですが、運営側としてはこちらの方がリスクも低ければ乗車人数も多いというもの…。

 

一部ボックスは車内販売スペースとなっています。

 

さて、続いては中間に連結されたトロッコ車両です。前後の12系に挟まれたやや小型の車体から明らかに出自が異なることが分かります。

 

これがまた中々のキワモノで、種車は京王5000系電車となります。改造に当たっては側面はほぼ1から作ったと言わんばかり、この姿から「かつて電気で自走していた」というかつての勇姿を思い浮かべることが出来ません。

 

車両の腰部分には一応存在するのであろう車両の愛称のステッカーが貼られています。こちらは「かわせみ」。

 

もう1両は「やませみ」の愛称を付けています。車両に愛称を付けるのはこのトロッコ列車に限った話ではなく、普通列車にも見られますね。

 

台車は馬車軌間では走れないこともあり、豊橋鉄道で使われていた旧国鉄型車両の台車を流用しています。何でも、101系や111系など、初期の新性能電車のものなんだとか…。

 

車内です。ロングシートは全て撤去され、簡易な座席とテーブルを設けています。外観だけでなく内装も元々は大都会を駆けた通勤電車であったことが信じられません。なお、車両形式は出自に関わらず「わ99」で統一されています。

 

車端部です。元の連結面を活かしているため幅広の貫通路で結ばれています。わずかに残された京王5000系の痕跡ですね。

 

渡り板は三枚仕立てです。幌の手前には鎖が付けられております。

 

反対側を見てみます。こちらには自販機が設置されています。

 

連結面の上には右側から車番プレート、号車ステッカー、禁煙プレート、座席種別のステッカーが貼られています。なお種車の車号はデハ5020・デハ5070で、数字は京王時代のものを引き継いでいます。

 

隅にはメーカーズプレートと改造プレートが並びます。この車両が選ばれたのも、車両整備の関係で京王重機と関係があったためなんだとか。ホーム有効長の関係で18m級車体を探していたわてつと、他社への改造の関係で2両が余ってしまった京王重機との利害関係が一致したことでこの改造に至ったのだとか。

 

旧12系客車との連結面です。こちらは旧12系に合わせて手すりが取り付けられています。

 

渡り板も床面高さが異なるのかアダプタを付けてレベルを合わせています。

 

天井です。空調や化粧板は全て撤去されており、代わりに中央に照明が設置され、その下には電飾が増設されています。この電飾はわてつで一番長いトンネル、草木トンネルでのみ点灯します。

 

窓の無い側面です。ここは元々ドアがあったところで、その痕跡は狭い間隔で並ぶこの柱くらいしか有りません。この柱があったりするので、戸袋部分を改造するのが難しいんでしょうね。

 

座席です。柱はそれなりにしっかりしていますが、簡易な座席とテーブルが設置されています。

 

座席に関して言えば背ズリは無きに等しく、背中合わせに座る人の占有面積を示したに過ぎません。うっかりラクな姿勢を取ろうもんなら背中同士がゴッツンコ…ということも有ろうと言うもんです。それがロマンスになるかそれとも…結末は神のみぞ知る(笑)  そうそう、先程の座席種別ステッカーの通り足尾行きは座席指定制ですが、大間々行きは整理券方式の自由席となります。

 

元の連結面を活かした車端部に関しては幅広貫通路に合わせて3人組ボックスシートとなっています。ここは妻面を背ズリとしても使えますし、通路側席も無いのでお一人様にはオススメです。ただ足尾行きに関してはこの席は1席しか有りません。

 

その理由がこの自動販売機。車内販売もある中でその存在に「?」な気もしますが、車内販売開始まではそれなりに売れていた印象です。手前の席に関しても、自販機との仕切りを背ズリとして使えそうですね。この列車のウリは渡良瀬川の美しい景色ですが、足尾行きに関しては神戸(ごうど)までは右側、以北は左側が良いイメージです。

 

さて、先述の草木トンネル通過時に点灯する電飾がこちら。青と白の電飾で中々に美しいです。

 

…が、最初こそ皆さん「きれい」だので写真を撮ったりしているのですが、程無くして騒音や風に耐えられなくなり一般客車へと逃げてしまいます(苦笑)

 

さて、わてつでは車内販売が非常に充実しており、駅弁の販売もしています。この日頼んだのは「やまと豚弁当」、甘く味付けされた豚が食欲をそそります。てぬぐいは記念に持ち帰ることが出来ます。なお、セットで昔懐かしいプラスチックの容器に入れられたお茶も頼むことが出来ます。駅弁は神戸駅のわてつ直営レストラン、「清流」にて作られており、予約無しでも買えますが数に限りがあるので予約が無難かと思います。ビールは車内販売の他、先程の自販機でも購入可能です。

 

またお土産にもなるタブレットクッキーや、群馬県らしくだるまも販売されています。だるまはわてつオリジナルの塗装がされています。

 

足尾駅にて一休み。この後機回しで機関車を付け替え、大間々行きとして上り列車になります。

 

ここからは駅に関するオマケです。

 

午前中に運転される下りの足尾行きは、大間々駅の奥にある0番線から出発します。足尾行きはトロッコ車両が全席指定で、10時からこの左手に専用のブースが設けられ、整理券と指定席券の交換を行います。この指定席券、硬券を使っているのですが日付の印字は刻印機にてスライドして行っています。

 

そして各駅に存在する保存車をご紹介。大間々駅の改札外の貨物ホーム跡には、かつてわてつで活躍した車両が静態保存されています。こちらはわ89-100形で、わてつ開業時に用意されたレールバスのうちロングシート車両のトップナンバーです。登場当時の塗装に戻されて保存されていますね。

 

またわ89-100に連結される形でわ89-300形も保存されています。転換クロスシートを備えたイベント対応車で、こちらは単色塗装で保存されています。

 

こちらは足尾駅。同じく貨物ホーム跡に、キハ35形気動車が保存されています。大間々駅とは異なり、屋根が無いので錆と色褪せが激しいですね…。

 

またそれと連結される形でキハ30形もいます。こちらはツートン塗装です。なお大間々駅のわてつ車共々、普段は車内への立ち入りが出来ません。ある特定の日に開放されることがあるんだとか。

 

足尾駅にはその他にもヨ太郎ことヨ8000形と、入れ換えに使われたとおぼしきディーゼル機関車があります。

 

その向かいにはタンク貨車のタキが2両あります。

 

保線用の機関車×2です。両者で進行度合いに差はあるものの、徐々に朽ちつつあります。

 

最後に…足尾駅の桐生方にある歴史を感じる煉瓦倉庫です。年期の入り方がさすがです。