JR東日本12系「ばんえつ物語」仕様車 | 車内観察日記

車内観察日記

鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

磐越西線の新潟-会津若松間を結ぶ「SLばんえつ物語」。週末パスの有効区間ということもあり、首都圏からのちょっとした遠出先の観光列車としても定着してきた感があります。

 

牽引に当たるのはC57 180号機です。落成から一貫して新潟を活躍エリアとして走り続け、廃車後は新津第一小学校にて静態保存とされましたが、長年に渡る生徒や有志による整備のおかげで極めて保存状態がよかったことから、この機関車が復活に選ばれたそうです。

 

「C」を表す3つの動輪。大きな動輪に細いボイラーの精悍さから「貴婦人」の愛称がありますが、「厳密にはこのグループは"貴婦人"ではない」なんて細かいこと言ってると変な目で見られますので黙って差し上げてくださいまし。実際、D51のゴツさに比べればかなりスラッとしていると思いますよ。

 

同じC57牽引の「SLやまぐち」と何かと対極に付される感がありますが、個人的にはこちらは「観光」に特化した印象、「SLやまぐち」は「日本一SL運転が難しい」と言われる山口線で、ここよりもスピードが速く、汽笛の吹呼も多い"走り"を自慢とするゴリゴリの体育会系のSL列車と言った印象です。とは言え、こちらもSL列車としては国内最長距離である126kmを4時間で走るわけで…。

 

会津若松にて逆機走行。なお、復活SLの先輩であるC57-1とD51-498は、一時期この機関車と3両揃って新潟で活躍した期間があるとのことです。

 

新津からの送り込みにはEF81電気機関車が使用されます。何気にひさし付きのレアな機関車ですね。私が初めて「ばんえつ物語」を見たのは小学生の時ですが、その時はEF64が担当していたような…。

 

で、私のメインは相変わらずこちら。「SLばんえつ物語」で使用されているのが全国でも少なくなった12系客車です。こちらは「SLばんえつ物語」専用とも言える編成で、この列車自体を「ばんえつ物語」と呼ぶこともあるそうです。合計2回のリニューアルを受けており、現在は「大正ロマン」をイメージした塗装に塗られています。国鉄型車両の整理が惜しげもなく続くJR東日本としては、珍しくしばらく使い倒す気満々な気がしますね。こちらとしてはありがたい限りですが(^^;;

 

まずは普通車指定席から参りましょうか。この「ばんえつ物語」編成、リニューアルの度に新しいコンテンツが追加されていってるため、編成内の取り上げ事項が多数あります。近年稀に見る長編ですのでゆっくりお付き合いくださいませ。

 

車体側面にはロゴが入れられています。右にEXPRESSの文字が見えますが、急行料金は不要、代わりに全席指定の臨時快速のため指定席料金が必要となります。

 

方向幕は上からステッカーを貼り付けていると思われます。車番の字体は他車と異なりオリジナルのものを使用しています。

 

お待たせしました、それでは車内へと参りましょう。まずはデッキドアです。オリジナルの折戸が残っています。開くときには車内側に開くので、少し離れて待ちましょう。

 

ゴミ箱です。国鉄時代の「くずもの入れ」の表示は消されています。

 

トイレです。中は洋式の温座タイプに交換されていますが、この便座がまた外れやすく、その度に車掌さんのお世話にならなくてはなりません。

 

洗面台です。高崎の12系ともども、ブラックフェイスで国鉄らしさは全くもって感じられません。こちらは半ば地域ジョイフルトレイン化しているので、高崎の12系よりはすんなりと受け入れられるような気がします。

 

車内です。木目調の化粧板に深紅のモケット、コンセプトの大正ロマンも「なるほど」と言った感じですね。

 

デッキとの仕切りです。仕切り扉はセンサーによる自動式となり、窓が細長いサイズになっています。非常ボタンや懐中電灯に国鉄時代の名残が見えますね。

 

仕切り扉上にはガス灯を思わせる飾り照明が取り付けられています。

 

天井です。照明が蛍光灯2列から白熱灯をイメージした丸型のカバーが掛けられたものに変わっています。冷房は従来の分散冷房がそのまま取り付けられています。荷棚は懐かしのパイプ式ですが、改造当初はプラスチックの板で、リニューアルのタイミングでパイプに戻されたそうです。

 

窓です。旧来の二段窓そのままで残されており、開閉も可能です。日除けは爪を引っ掛けるロールカーテンタイプのものが備わります。

 

座席です。ボックスシートが整然と並びます。一回目のリニューアルの際に座席に手を加えられており、フレーム自体は既存のボックスシートのものを使いながらも、従来よりもヘッドレストが30cmかさ上げしています。通路側の肘掛けには小型のサイドアームテーブルが取り付けられています。

 

窓側の固定テーブルはそのまま残されているので、飲み物等の置き場に困ることもありません。座り心地としては、元のフレームがしっかりしているため角度等は申し分ないですが、増設したヘッドレスト部分が盛り上がっているため少々違和感を覚えます。背ズリがバケット化されたため、なんだかチャキチャキした印象もありますね。

 

で、デッキ仕切り際は通路幅の関係で横幅が詰められています。JR東日本よ、ここの背ズリまでバケット化したのはアウトです。何がダメかって、ただでさえ狭い横幅をバケットの盛り上がりで殺しにかかるのはいかがなものかと思うのです。サイドアームテーブルの取り付け方法を工夫して占有面積を少しでも広くしてもらおうとした配慮があるだけに、余計に残念に感じました。

 

お次は5号車です。ここには車内販売スペースが存在しております。

 

車内です。他の号車と特段変わったところはありませんが、車内販売スペースとの仕切り扉が右側に寄っています。

 

車内販売スペースです。駅弁やグッズなどが売られており、品揃えはかなり充実していると思います。

 

車内販売横には「SL茶屋」と称するスペースも存在します。実際には隣のカウンターで注文を行い、一部商品をここで出すために使われている感じでした。

 

続いては中央の4号車に連結された展望車です。

 

車高から寝台車を改造したようなシルエットに見えますが、実際は12系からの改造で、下回りを流用、車体は新しく造り直しています。

 

ロゴは従来からのものと、二度目のリニューアル後のものの2つが存在します。

 

デッキドアです。車体を新製した割には指定席車と同様の折戸となっております。屋根のスポットライトが余計に寝台車っぽさを醸し出しているんですよねぇ(笑)

 

ゴミ箱です。飲料系とその他で分別されています。飲料系に関しては穴が2つとなっていますね。明確に分けているわけではないので、恐らく中は一緒になっていると思われますが…。

 

車内です。定員0名の完全なるフリースペースとして連結されています。

 

デッキとの仕切りです。仕切り扉は常時開いた状態でセットされています。なお、横のテレビではC57-180号機復活までの軌跡を放映しています。

 

天井です。照明はダウンライトとシャンデリアとなっています。冷房は集中式に改められており、吹き出し口はラインフロータイプです。

 

窓です。元々シートピッチを考慮したものではありません。

 

窓にはカウンターテーブルが設置されています。椅子はバータイプのもの、長居は出来ませんね。

 

向かい側にはサービスコーナーがあり、大正時代から使われていたという丸ポストとスタンプ台が設置されています。ここのポストに投函すると、オリジナルの消印を押して送ってくれるのだとか。ただし、切手は自前で用意する必要があります。切手販売にはハードルがあるのかもしれませんが、車内で切手を売ってるともっと需要が見込めると思うんですよね。というか、出たとこ勝負で乗り込んだ人が投函出来ないのはどうよって問題が先ですね。スタンプは大きな駅に置いてある駅スタンプと同様の器械式です。

 

そして「展望車」のメイン、ハイデッキ部分です。個人的には、深夜の新津で一瞬出会っていたであろうトワイライトエクスプレスの展望車、「サロン・デュ・ノール」を思い起こさせてしまいます。

 

窓です。肩部分にまで伸びた大型窓から、磐越西線の自然豊かな景色を楽しむことが出来ます。

 

こちらにはソファが窓側を向いて置かれています。譲り合って使いましょう。

 

フリースペース内にもゴミ箱があります。その上にはこの列車のイメージキャラクターであるオコジョの説明書きがされています。

 

続いて、「ばんえつ物語」の最新設備、1号車へと参りましょう。

 

「オコジョルーム」と名付けられたこの車両、4号車と同様定員0名のフリースペースとなっています。

 

ロゴもこの通り、中央にはオコジョが描かれています。

 

先端の塗り分け部分にはオコジョのシルエットが。

 

なお、改造にあたっては車掌室が付いた側を連結面に向けて反対側を大改造するという手法をとっており、連結面側には車掌室がそのまま残されています。三面体も保っていますが、尾灯が撤去されたためのっぺらぼうですね。オマケに窓にも何か取り付けられて軽くサイボーグ化したように見えます(^^;;

 

車内です。完全に子どもの遊び場ですね。いいと思いますよ、乗車時間が4時間にもなる列車でずっと座席に座らせ続けるなんて現実問題厳しいと思いますし、ここで思う存分騒いでもらえれば座席の車内はとても静かになりますし、大人にも子どもにも優しいと評価します。

 

通路との仕切りにはオコジョの絵が入れられています。「オコジョの原っぱ」だそうで。

 

そして滑り台もあります。こちらは「オコジョの山」だそうです。

 

本棚もあります。読み物って、それなりに時間を潰せるんですよねぇ。

 

保護者用でしょうか、通路には固定式の丸椅子が6脚設置されています。なお、ここの窓は全て固定式に変更されています。

 

天井です。空をイメージしたのか、ブルーのLEDライトで飾られています。それでも、分散冷房はそのままですね(笑)

 

そして一番奥に位置するオコジョ展望室です。

 

側面窓は固定二段式で、開放感に溢れた作りとしています。

 

妻面にはお立ち台が設置され、子どもの身長でも窓から景色を見られるようにしています。

 

多目的室です。普段は施錠されていますので、ご利用の際は車掌さんにお声かけください。

 

さて、最後は全国のSL列車で初の常設となったグリーン車です。1号車よりも更に窓の面積が大きくなっているこの車両、下回りを残して車体は新製したそうな。ちなみにグリーン車は指定席、青春18きっぷではご利用出来ませんのでご注意を。

 

快適性向上は言わずもがなですが、フリースペースや車内販売スペースを充実させたことから編成あたりの定員が登場当初の504名から338名へと大幅に減少しており、その減少分を少しでも回収するための営業上の設定なんじゃないかと思ったりしています。とは言えグリーン車の定員は30名、満席にならないとちょっとキツいですよね。幸い運転する列車はだいたい満席御礼のようですが…。

 

グリーンマークもこの通り。ドアは引戸式で、車体製造元の新潟トランシスらしくJR西日本世代の車両のような4打点の開閉チャイムが流れます。大事と言えば大事ですが、あの新潟トランシスの音はグリーンにしては安っぽい気がします。

 

ちなみに、グリーン車はグリーン券を持つもののみ入室を許可されており、常時車掌さんかスタッフさんがデッキにて待機しています。近年稀に見るグリーン車のステータス感が出ていると思います。

 

というわけでグリーン車内です。車体を一から造っただけあり、改造車とは違う自由度の高さがお分かりになるかと。

 

天井です。照明は枕木方向の飾り照明と、レール方向の直接照明の2通りです。直接照明のほうは一時期JR東日本が大好きだったスリットを並べたものですが、光源がLEDになったために副作用としてしっかりカバーが入っています。蛍光灯だったらカバーが入っていなかったと思われ、かつて会津若松で接続していたコレのように叩く結果になっていたかもしれません。

 

窓です。固定式で、フリーストップタイプのロールカーテンが備わります。荷棚が装飾付きでとてもオシャレです。

 

座席です。今時のJR東日本としては珍しい全室構造で1+2列配置となっています。

 

まずは2人掛けから。テーブルはインアームテーブルオンリー、駅弁も売ってる割には中々に貧相です。乗車時間の割に、フットレスト等も特にありませんね・・。この辺りは「普通列車」としての割り切りでしょうか。そしてこの座席、見て分かる通り背ズリが後ろへ反り返ったような形状をしています。普通に座っているときは勿論、リクライニングしたらもうレイバックイナバウアーです。気道を圧迫されるような疲労感、その割に座面チルト等もないわけですから中々キツいですな。

 

1人掛けです。多くの列車ではC列が宛がわれますが、ばんえつ物語ではA席となっています。

 

このグリーン車、座席以外にもやらかしているのは給電用エンジンを付けていることです。客車列車の性格上給電エンジンは必要ですが、エンジンの振動がずっと車内に響くんですよね。色使いなどに「落ち着いた空間でゆったり」を志向していると思うのですが、本当にそう思ってるなら発電エンジンは隣の6号車に移設するべきです。窓も開きませんし、会津若松行きでは座席に座っていると「キロ」に乗ってるのかと思わされてしまいました。これが先述の「営業の都合で設置したグリーン」と思ってしまった理由のひとつです。

 

1人掛け展開の図。まぁ座り心地は変わりません。結論としては、リピートして乗車するなら普通車を選択することとなりそうです。個人的な見解ですが、SLは五感を使って楽しむ列車という持論を持っています。窓を開けてSLの汽笛から始まり駅弁を食いながら風を受け、煙の香りの懐かしさと田舎の風景をボーっと見る。これがSL列車の醍醐味だと思うんですよねぇ。それを楽しむならボックスシートで十分に感じるわけです。

 

グリーン券とグリーン車記念乗車証。どちらかをデッキで見せないとグリーン車内に入れません。

 

座席部分ではやいやいと言いましたが、ここはグリーン料金の価値があるかもしれない展望室です。先程から述べている通りここに来るのはグリーン券を持つ者のみ、比較的穏やかで静かな環境で1号車よりもダイナミックなパノラマを楽しむことが出来ます。

 

天井です。肩部分は天窓となっています。

 

座席はありませんが、照明を仕込んだ腰掛が設置されています。長居が出来ないようにしているわけですね。ここの照明は、新潟行きの夕刻~日没にかけてがムーディでイイ感じの雰囲気になるそうです。

 

客室との仕切りにはミニギャラリーがあります。季節によって内容も変わるそうな。

 

少し車内販売にも触れておきましょうかね。「ばんえつ物語」では、この手の普通列車としては珍しい生ビールが販売されています。生ビールは新潟限定の「サッポロ 風味爽快ニシテ」で、サッポロビールの生みの親が新潟県民だったことからこうして販売されているそうな。セットに付いて来るのは新潟の郷土料理の「鮭の焼き漬け」、これがまた絶品でして、復路では完売となるほどの人気でした。あまりにおいしかったので、実家へのお土産として新潟駅で買ってしまいました(笑) ちなみに画像はイメージ、鮭の焼き漬けは実際は真空パックに入れられた状態で出されます。また5号車から各車まではローカル軌条で揺れる車内の移動を強いられます。頑張りましょう。

 

車内では長時間乗車で退屈しないようにレクリエーションが行われます。スタッフさんとのじゃんけん大会が往復とも行われ、勝ち進むと「ばんえつ物語」限定のキーホルダーがもらえます。片道1両につき4個が景品として出されるわけですが・・ええ、大人げもなく勝ち進みゲットしました(苦笑)