JR西日本キハ40形「ベル・モンターニュ・エ・メール(べるもんた)」仕様車 | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

2015年3月に北陸新幹線が開業して並行在来線となる北陸本線が3セク化し、18きっぱーを中心に非常に行きにくい路線となってしまった北陸地区の枝線群。富山県の氷見線・城端線も例に漏れずその中の2路線で、新たな乗客獲得が課題となっていました。そんな2路線に2015年10月、北陸ディスティネーションキャンペーン時にありそうでなかった観光列車が登場致しました。

 

ベル・モンターニュ・エ・メール(Bells montagnes et mer)、フランス語で"美しい山と海"を意味する列車名で、富山県の立山連峰や富山湾の美しい風景を楽しんでもらう為に登場した列車でございます。いやーロゴも含めてカッコいい。

 

しかし、「列車名付けてみたはええけど長いし憶えらんねーからひらがなにして略してまえ」と言わんばかりに「べるもんた」なんて愛称にしてしまうんですから、その本名のカッコよさと愛称の脱力感とのギャップは凄まじい破壊力を持っています。いやはや金沢支社、あいも変わらず斜め上を突っ走るそのクオリティセンスは昔から変わりません。

 

なお、車両は旧高岡鉄道部の金沢総合車両所富山支所高岡運転派出在籍のキハ40形1両を改造したものです。このような地域ジョイトレは2両以上であることが多いですが、単行というのは珍しいですね。おかげで満席となるケースが多く、地方交通線である氷見線・城端線のささやかな増収の途となっていることでしょう。

 

塗装はモスグリーンにゴールドを配したもので、かつて高岡を走り抜けたトワイライトエクスプレスを彷彿とさせますね。運用線区は氷見線と城端線で、全席指定の臨時快速、「ベル・モンターニュ・エ・メール」で運転されていますが、日により運転区間が異なります。運転日は時刻表等をお確かめ下さい。

 

車内です。外観とは打って変わって内装は和風となっています。

 

ドアです。やはり普通列車用のためか、化粧板は貼られていません。この辺り、向かいの能登半島を走る「花嫁のれん」とは考え方というか、料金格差をやんわり付けたんでしょうね。

 

ドア扱いは通年半自動、料金が必要な列車ではありますがそこはあまり関係ないようです。

 

城端方の運転台です。化粧板はベージュから「べるもんた」らしく緑色に貼り替えられています。

 

ワンマン運転対応時に取り付けられた運賃箱はそのまま残されています。べるもんたに乗る客がきっぷを持たないことがあるのか、とも思いますが、一応無人駅も停車駅に含まれているのでそれに対応するためなんでしょうね。

 

氷見方の運転台です。何やら、手前に見慣れない設備があります。

 

何かと申しますと、寿司のネタケースでございます。この「べんもんた」、なんと車内で板前さんが寿司を握ってくれます。指定席料金が必要ながら、ツアー専用でもないのにしっかりした料理を提供する車両も珍しくなりました。なるほど、それがメインとしてあるから車内が和風なんですね。

 

その手前には地元のお土産が販売されています。

 

その向かい側にはカウンターがあり、車内販売の精算等はここでアテンダントさんに頼むこととなります。ちなみにこのような配置となるため、出入口は城端方のドアのみとなっております。

 

天井です。元々蛍光灯が2列配置で並んでいましたが、中央に丸形の蛍光灯を配する形に改められ、和風の飾りが施されています。冷房装置はべるもんた化以前のままで変わりませんが、氷見線の海側は眺望を邪魔しないように荷棚が撤去されています。

 

ロングシート上には吊革が残されています。全席指定席で運用されるため、基本的に立ち席は発生しないのですが…。吊り輪自体は木製、留め具は地元の工芸品である高岡銅器をイメージした銅箔を貼り付けたものとし、図柄は沿線4市をあしらっています。またもとの蛍光灯で残された部分にも木製の格子で装飾されています。

 

デカい割に冷えない冷房装置を補助する目的で扇風機が残されています。見にくいですが、真ん中のロゴはJR西日本から"Bells montagnes et mer"に貼り替えられています。

 

で、隣の扇風機を見ると「べるもんた」…。

 

窓です。氷見線の山側は構造自体は従来通り、下段固定上段上昇式ですが、外枠部分が金色で塗られています。車窓を風景画に見立てていることから、額縁をイメージしたのでしょうね。

 

で、海側の窓。一部の窓はどーんと太っ腹に大型窓に置き換えられています。いやはや、昨今のJR西日本らしくないですねぇ(笑) 景色を重視するため気動車にありがちな窓の汚れもなく、きっちり磨かれているようです。

 

座席です。まずは氷見線では山側にあたるボックスシートから。種別も快速列車であり、乗車時間がさして長くない両線の費用対効果を考えた結果なのでしょうね。そこが「花嫁のれん」との違いでしょうか。

 

座席フレーム自体は特に変わらず。変更点としては、テーブルの新設、フレームの再塗装、モケットを207系や321系で使われているグリーンのものへ貼り替え、持ち手を木目調の握り棒へ置き換えたこと、そしてなぜだか肘掛を撤去した点でしょうか。そりゃあ、テーブルが新設されたので出入りがしにくいのは分かりますが・・。

 

片面タイプの座席。微妙にですが、横幅が狭くなっています。S席は車端部のみと、思うことなかれ。

 

中央のテーブルはミトーカデザインよろしく面積を広げられるタイプですが、正直畳んだままではどのように使ってほしいのかが全く謎。畳んだままで使うというより、出入りに邪魔だから畳めるようにした、と解釈するのが正解なのかもしれません。その意図は果たして乗客側には全面的に伝わっているのでしょうか・・。

 


そしてキハ40ではお馴染みの2人掛け。こちらのテーブルは固定式、ただでさえ狭い上に足元も広くないこの区画では窓側は激狭の極みです。おまけにここの座席幅は右に見えている片面タイプより狭くなっています。

 

続いて氷見線海側のカウンター席です。

 

座席は本当に飲食店のカウンター席と同様です。現在座面にモケットが貼られていますが、登場時はこれがなく全面木材の曲げ加工品オンリーだったそうです。揺れる地方交通線規格にコイルバネ台車という車内環境としてはしっかり座っても滑りやすいという厳しい状況にあったと思われ冒険しすぎです。

 

で、窓は合体により大きくなっても柱の位置は変わらないので、手前から二列目のようにカウンターでありながら修行席という残念な区画も存在します。「べるもんた」でWeb検索すると、おでかけネットに窓割と座席表が一体となったイラストがありますので、窓枠が被らない席を確認し、一ヶ月前の指名買いをするのが得策です。

 

カウンター席は2ブロックに分かれており、中央には地元工芸品が展示されたショーケースがあります。正直、ただでさえ1両編成なんですから座席数を稼いでくれ、とも思わないでもないです。しかし、この手の車両はそこは覚悟の上で、地域と共にあることを第一としている表れと理解すればいいんでしょうね。

 

トイレとボックスシート間に挟まるロングシートです。全席指定とはいいつつも飛び乗る輩は存在するもので、そちらの救済処置的使われ方をしているのではないかと思う今日この頃です。全席指定席列車に指定席券を持たずに飛び乗って「指定席を持っていないのに指定席料金を取られるのはおかしい」とのたまう方がいらっしゃいますが、「全席指定席」という列車は、"座席を指定する料金"ではなく、グリーン車と同様"指定席車という特別な車両に立ち入る料金"だという認識を間違えてはいけないように思います。このあたり、グリーン車と普通車との間に「520円クラス」があれば済む話なんですけどねぇ・・。そうなるとピーク時の新幹線で「指定席でも立ち席可」という処置が出来なくなるので、JRとしては対応に困るところではないかと思っています。

 

各部の仕切り衝立には南砺市の伝統工芸品、井波彫りが使われております。こちらは世界遺産に登録された合掌造りですね。

 

全部で8種類あるそうで。

 

そしてこちらはボックスシート背面。右の波模様、素敵です。

 

トイレです。スペース的には従来のままですが、中は洋式に交換されています。この辺りはさすが観光列車。手前には洗面台も備わります。形式こそ「キハ」ですが実質は「キシ」、食事を提供するからには衛生的に設置を義務付けられているんでしょうね。

 

ゴミ箱も緑で「べるもんた」仕様。

 

さて、先程から少しずつ話を出していますので多少は触れておきましょう、車内で握ってもらえるお寿司はこちら。「ぷち富山湾鮨セット」でして、寿司5貫とはと麦茶がセットになっております。お値段は2,000円、正直予約をするかどうか少し悩むお値段ですが、予約して正解だったと思いたい上等なおいしさでした。予約はネットにて3日前までに「VISIT富山」という地元観光プランのサイトにて行う必要があります。これがまた分かりにくいというか、操作にてこずるので改善をお願いしたい次第。ネタに余裕があれば車内での注文も受けるみたいですが、事前予約が賢明かと。

 

更に地酒を追加で注文、こちらは今回乗車した氷見線の沿線、氷見市の地酒である「あけぼの」です。お味としてはやや辛めですね。今回の乗車では最後の一振りだったようで、グラスに表面張力ギリギリまで注がれたのでした。くどいようですが、地方ローカル軌条にコイルバネ台車、升に入っているとは言えスリリングでした(苦笑)

 

富山県初の地域ジョイトレ、「べるもんた」。臨時扱いではあるものの、定期的に走り乗車率も高く好調に推移しています。そろそろもう1両の追加や、城端-氷見直通列車などを考えてみてはいかがでしょう?