JR西日本12系700番台「SLやまぐち」仕様車 | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。


SL列車の歴史を語る上で外すことの出来ない列車がこの「SLやまぐち」号。国鉄時代にSL牽引列車の定期運用が消滅してからわずか3年半後に臨時快速列車として走り始め、30年以上に渡ってこの地を走り続けています。以降、SL列車の運転が全国に広がって行ったのは言うまでもありません。


そんな「SLやまぐち」号に使用されるのがこの列車専用に改造された12系レトロ仕様客車です。かつては1両ごとに塗装やデザインが異なる雑多な印象でしたが、リニューアルを機に旧型客車風のぶどう色に白帯を巻いたものに統一されました。新山口方には展望デッキも備わっています。


津和野方はこんな感じ。何やら本当に客車列車全盛期のような連結のされ方ですが所定編成ではこれが正調で、ここも展望スペースとして改造されています。


改造を行ったのは数々の迷車を生み出してきた幡生の匠、これもある意味隠れた食パン化改造とも言えそうなヤッツケ改造具合です。もう少し展望スペースらしく窓を大きくするなり出来なかったでしょうか・・。


なお、4号車にはスハフ12形が連結されています。かつてはこちらが先頭だったのですが、先述の津和野方に展望スペースを設けたかったこと、車掌室を無くせない関係からこの位置に落ち着いた模様です。


方向幕やサボ等は専用のものが用意されています。


それでは参りましょう。客車は5両編成でそれぞれ内装が異なっており、到着後すぐに追い出されるような運用なので取材に少し難儀しましたが(^^;;  まずは1号車、展望車風車両から。戦前の展望車、オイテ27000形を参考にしたそうな。


デッキドアです。折戸構造はオリジナルの12系と変わりませんが、窓が角張ったものとなっています。


車内です。元となった客車の記号の通り、一等車をイメージした豪華な内装となっています。


天井です。ダブルルーフ状に改造されており、段差部分には照明が仕込まれています。荷棚は各ボックスに一枚、その間には電灯風の補助照明が設置されています。


窓です。日除けは横引き式のカーテン、こちらもかなりシャレたデザインですね。


座席です。こちらもイメージとしては一等車風、座席自体もハイバック化されており、従来のボックスシートよりも頭一つ分高くなっています。かつては柄入りで明るい赤のモケットだったのですが、いつの間にか現在の少しくすんだ臙脂色のモケットに変更されたようです。座り心地はややイマイチで、背ズリの腰に当たる下段部分が中段よりも奥まった部分から出ているので違和感に見舞われると思います。モケット貼り換え前は現在よりも角度が付いていなかったので、シートピッチを維持したまま角度を付けたかったような苦心が見え隠れしていますが・・。


デッキ仕切り際のボックスシートです。やはり仕切り扉の関係で横幅が切り詰められており、窓側の肘掛けも省略されています。ちなみにシートピッチは青い従来の12系客車よりも広くなっており、ボックスひとつ分を潰して窓も移設しています。にしては窓が小さめで、景色を見るにはちょっと不向きですね。SL列車専属のようなものなので、石炭の粉やらすすやらが入りにくいようにしたい気持ちがあったとは思いますが…。


座席番号はプレート式のものと、なぜだかステッカー式のものが合わせて存在しています。プレート式は少し見辛かったのでしょうか?


さて、展望車風というからにはここを紹介せねばなりません。


仕切り扉を隔てたその後は展望車をイメージしたフリースペースとなっており、指定席券を持っていれば誰でも使えるようになっています。


フリースペースの座席です。確かに現存するマイテ49もこんな感じですね。最近はめっきり連結されなくなりましたが…。
 

そして展望デッキです。本当に屋外に出られる車両もかなり少なめですね。転落防止のため柵はやや高くなっており、トンネル区間では車掌さんにより施錠され立ち入り禁止となります。
 

展望風車両の説明書きです。
 

次は2号車の欧風車両です。手前の照明もかなり凝ったものとなっています。
 

ドアです。先程の展望車風車両と比べると化粧板の色が異なっています。
 

くずもの入れですが、他の車両が日本語表記なのに対してこちらは英語表記をメインとしています。
 

トイレです。欧風車両にも関わらず、中はオリジナルの和式のままとなっています。親子連れも多く乗車するこの列車では長い歴史の中で難儀した方も多いのではないかと思います。
 

洗面台です。こちらは陶器や蛇口等を丸々替えているものの、鏡や照明は比較的オリジナルに近いと思います。
 

通路の鏡です。こちらも改造やリニューアルが施された後でも残されています。
 

車内です。オリエント急行を参考にしており、こちらも展望車風に負けない豪華さが光ります。
 

天井です。ダブルルーフ状の造形は変わらず、中央の照明や補助照明、荷棚の形状が確かにヨーロピアンです。
 

 補助照明と荷棚です。ええ、凝ってます。窓の日除けは1号車と違って外吊り式となっていますね。


 座席です。ハイバック式のボックスシートは1号車と同様ですが、上部にステンドグラスがはめ込まれ、サイドに張り出しを設けて少しコクーンな感じになっています。


座り心地の感想としては1号車に同様なのですが、肘掛の形状が個人的にはあまり好きではありません。もはや肘掛というよりは本当に仕切り、丸い造形の方がヨーロピアンに見えると言えば確かにそうかもしれませんが・・。ちなみにこちらもモケットが変更されており、今より明るいバラ柄でした。
 

そして欧風車両の説明書き。


続いては3号車の昭和風車両。昭和初期の旧型客車をイメージしており、手前の照明もぐっと現代に近づいてます(笑)


 くずもの入れです。こちらはオール日本語表記となっています。


こちらの車両は洗面台の設備を撤去して荷物置き場としてます。確かにトイレの中にも手洗い用の蛇口は存在するので、運行距離もさほど長くないこともあり不要不急と言われればその通り。


車内です。これまでの車両と比べるとグッとシンプルになりました。いや、今までの味付けが濃すぎた感はありますが(^^;;


天井です。これまでの車両とは違いオリジナルの形状に近いままで、照明を蛍光灯から飾り照明に変更しています。冷房装置は分散冷房でゴツいものが引き続き使用されていますが、飾りカバーで見栄えをよくしているのは気配りでしょうか。
 

窓です。昭和風だけあり日除けは爪を引っ掛けるロールカーテンタイプとなっています。しかしこれがまた曲者でして、我々が慣れているような爪が窓側に向いたものではなく、爪が車内側へ向いたものとなっています。なんでこんな形にしたんでしょうね?
 

荷棚は網棚となっていますが、これは当時を忠実に再現しすぎです(^^;;  確かに当時の車両の網棚を見ると、こんな感じでダボついているんですよねぇ。実際に使う側からすれば、載せるにはいいにせよ取り出すときに苦労しそうですが(笑)
 

座席です。こちらは従来のボックスシートのフレームを活用していることがよく分かる仕様となっています。肘掛けの形状なんて青かった時代のままだろうと(笑)
 

座り心地は従来と比べるとモフッとしたものになってるかと思います。同様にハイバック化もされているので、オリジナルよりもむしろよくなってるんではなかろうかと。
 

続いてはこちらのスハフ12を閉じ込めた4号車です。
 

内装のイメージは明治風、車両の順序を入れ替えしまったため本来大正風が来なければならないところがこのようになってしまっています。確かに内装まで揃えると余計な費用がかかってしまいますが…。
 

車掌室です。化粧板だけが貼り替えられており、構造自体は変わりません。
 

向かい側もこの通り。現存する客車列車の中で、貫通構造を生かした数少ない列車と言えます。
 

で、車内です。一気に開放的になったのは勿論です。画像では「ああ、レトロチックやねぇ」と思う所ですが、実際に乗車すると他の車両(特に1・2号車)と比べてどことなくバリューダウンを感じるかと(^^;;
 

デッキとの仕切りです。仕切り扉は普段から開きっぱなしにされています。
 

天井です。こちらも昭和風車両同様、従来の構造をそのまま生かしていますが、木目調の化粧板を貼り付けています。
 

荷棚は昭和風同様網棚ですが、ダボりは少なくなっています。で、補助照明もガス灯をイメージしているようです。
 

座席です。革張りとなっていますが、本当に明治風を目指すなら板張りなり畳張りにする方がより明治風に近付くかと思います。要するに、明治時代でも革張りの3等車なんてほとんど見られませんよ、と。
 

シートピッチこそ他の車両と同等ですが、背ズリの低さなどを見ているとやはり見劣りしてしまいますね。そうそう、日除けは木製の鎧戸となっています。二段構造で、セットは少しややこしいです(笑)
 

仕切りには当時の様子であろうイラストが額縁入りで飾られています。


明治風車両の説明書きです。
 

さて、順序が入れ替わってしまい5号車に位置している大正風車両です。
 

車内です。期間が短いこともあり昭和風に近い印象ですね。
 

天井です。こちらはダブルルーフ状となっています。今見ると金を掛けた造詣に見えますが、当時は日光の取入れを目的としていたようです。照明の技術もそこまで進歩していない中で、何とか車内を明るくしようと頑張っていたのですね。


窓です。日除けは明治風同様の木製の鎧戸、荷棚はやはり網棚です。
 

座席です。昭和風車両の色違いのように見えますが、実は肘掛けの形状が異なっているという微妙な罠(笑)
 

この車両の奥には後年改造された展望スペースがあります。貫通構造となっているためかどうかは不明ですが、座席も何もないガランとした空間でちょっと寂しいです。反対側のように、ちょっとした腰掛けが欲しくなります。
 

天井は改造前のダブルルーフ状のままとなっています。
 

窓です。こちらは幅を広くした関係で日除けが横引き式のカーテンに改められています。
 

窓からは機関車がどどーんと…てなんでDD51なんだって話ですが、それはまた後程。
 

編成に一ヶ所、洗面台を撤去した場所以外にも荷物置き場があります。
 

その向かい側は車内販売用ワゴン車置場とされていますが、乗車時は実施されていませんでした。左側にあるのは冷凍庫でしょうか。
 

新山口の円形車庫には、明治風客車のスハフ12 702に積んでいるサービス電源用エンジンの故障や不調時に備えてオリジナル形態のスハフ12 36が配置されていました。こちらは「昭和風」なんてもんじゃなく「昭和」の車両、平成の味気ない電車しか知らない今のちびっ子からするとこれすら新鮮なんじゃなかろうかと思います。予備車両であるため恐ろしく稼働率が低く、中々狙っては乗れない車両でしたけどね(^^;;
 

さて、ここからは牽引機関車アラカルト。今回の乗車は2017年1月に運行された「SL津和野稲荷号」です。
 

牽引は「SLやまぐち号」所定の"貴婦人"ことC57 1号機ではなく、普段は「SL北びわこ」の牽引に当たっている"ポニー"ことC56 160号機が先頭を務めました。結局、C56牽引列車も、この12系に乗るのもこの機会が最後でございました。
 

ヘッドマークもお正月仕様です。なにやらSLが牽引した最後の定期特急列車だった「ゆうづる」みたいですね(笑)  
 

この列車が運転される山口線は急勾配が存在する険しい線形で、C56の出力では登坂性能に無理があるため次位にはDD51形ディーゼル機関車が連結されていました。安定運行のための名脇役、総括制御でもないのに息を合わせた走行、双方の汽笛によるコミュニケーションと12系客車のジョイント音という三重奏には胸を打たれるものがありました。これは単機牽引のC57では基本的に見ることが出来ないもの、乗った甲斐がありました。
 

新山口の客車回送はDE10形が担当します。何やら一昔前の客車普通列車みたいですね。こちらも脇役中の脇役ですが、やはり欠かすことは出来ません。
 

DD51とDE10、一瞬の出会い。
 

そして、車庫へと走り去って行きました。

「SLやまぐち」は2017年9月より旧形客車を忠実に再現した新型客車へと置き換えた上で運用を開始しましたが、この車両は大井川鉄道で第二の車生を歩むことになりそうです。頑張って欲しいですね。



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