JR東日本キハ58系「Kenji」仕様車 | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。


国鉄時代に派生系列を含めると最多数が製造されたキハ58系グループ。JR化後も様々な改造が施されながらそれなりの数がいたものの、今やクリームと朱色の純正車両は全てが姿を消し、JR線上に最後まで残った営業車両は、この水色の奇っ怪な3両だけでした。
 

ジョイフルトレインとして大改造されたこの3両、国鉄最末期に「サロンエクスプレスアルカディア」という名前で改造され、JR化後に新潟支社管内で運転を開始しましたが、運転開始から1年も経たないうちに1号車が全焼するという事故が発生し助かった2両も休車、幻のジョイフルトレインとなってしまいました。
 

その後4年もの歳月が流れた後この2両は盛岡支社に転属し、新たに改造された1両を追加して「Kenji」という愛称になって今日まで活躍してきました。「Kenji」とは岩手出身の詩人である宮沢賢治から来ています。
 

両先頭車はハイデッカーのパノラマ仕様車で、台枠を残して上部を全て切り取りこのブロックを新設するという荒業で改造しています。この改造手法は北海道のキハ56系気動車を改造した「アルファコンチネンタルエクスプレス」に源を発し、他にも金沢支社のキハ65形「ゆぅトピア」や「ゴールデンエクスプレスアストル」、近畿地区の「エーデル」シリーズ等が存在しましたが、いずれも姿を消してしまいました。ええ、私も含めて今の若者が知らない「バブリー」に溢れた時代でしたよねぇ(遠い目)
 

3両の中間に挟まっているのはキハ28-2010で、こちらはJR線上に現存した唯一のキハ28となっていました。一応先頭車としての機能も残っており、2両で運転することも出来ます。
 

懐かしの「自動ドア」の文字。こんな所に国鉄時代の名残があります。最後のキハ58系だけあって乗務経験が無い乗務員さんも多いのか、扱いはマニュアル頼みになる程の車両となっているようで…。
 

最後は盛岡車両センターに配置され、東北地方を中心に様々な所に出没していました。何でも、まだ東北新幹線が盛岡までしか来ていなかった頃に盛岡-青森間を結んでいた速達タイプの「スーパーはつかり」という列車がありまして、現在は「つがる」として運用されているE751系が故障した際に代走したのがコレだったというウワサ・・。最高速度130km/hの電車運用に、コイツは鬼畜過ぎます(笑)
 

デッキドアです。窓が小さく化粧板が貼られていないそれはオリジナルタイプと変わりません。地方の低床ホームに対応する為にステップも残っています。
 

くずもの入れです。内蔵式なのは変わりませんが、表記が変わっていますね。
 

トイレです。中はジョイトレらしく洋式になっています。持ち手もちょっぴりオシャレになっています。
 

洗面台です。元々は鏡の位置にありましたが、自動蛇口となって移設されたようです。確かに導線としてはこちらの方がよいのですが、ついでに鏡も移しましょうや…。おかげで見た目としてはかなりシュールです。
 

車椅子対応トイレです。バリアフリーのバの字もなかった国鉄時代の車両ながらここに押し込んだのは努力賞でしょうね。
 

多目的室です。この時は故障中として入室不可でした。
 

自動販売機です…が、平成20年を最後に営業を終了し、そのまま放置されています。
 

キハ28の運転台部分です。普段は両側を貫通扉や仕切り扉で入れないようにしています。
 

車内です。キハ58と言えばボックスシートがズラリと並ぶ印象を持っている方が多いと思いますが、ジョイフルトレインは全てを変える力を持っているのです。
 

こちらはキハ28の座席部分です。アルカディア時代はここがサロンカーとなっており、全面絨毯敷きで土足厳禁、ソファ24席にテーブルを置き、天井にはシャンデリア等が設置されたそれはもうバブルの粋を結集させたような豪華絢爛な車内だったようです。
 

デッキとの仕切りです。左側には黒い板が貼り付けされていますが、元々はテレビモニターとカラオケ設備が収まっていました。しかしねぇ、もっと目立たない色にするとかの配慮は出来なかったのかと思います。この辺はさすが古い車両に容赦なく冷たい昨今のJR東日本らしいなと・・。
 

天井です。照明はカバー付きの蛍光灯となり、数も増やされています。冷房の吹き出し口もルーバーが掛けられオシャレにまとめられています。一部座席上に荷棚はありませんが、これはカラオケテレビの視界を邪魔しないようにするためなんでしょうね。今となっては「なんで荷棚が無いんだ!」と怒られそうなものですが(^^;;
 

窓です。配置はボックスシート時代から変わりませんが、一段下降窓から固定式に変更され、日除けも横引き式のカーテンになっています。
 

座席です。元あったボックスシートはセミハイデッキ化の上でフリーストップ式のリクライニングシートに改座されています。
 

付帯設備はシートバックテーブルのみ、大きさも十分ではないので駅弁程度にしておくのが幸せです。灰皿もありますが勿論全車禁煙です。
 

向かい側の座席はピンク系統のモケットとなっています。座り心地はソファを意識したもので柔らかめ、背ズリの分厚さはややもすると暑苦しく感じるかもしれません。ちなみに窓割りはボックスシート時代のままなので、柱と被る修行席もある程度存在します。更にセミハイデッキ化されているにも関わらずまだ窓側足元の配管が残っています。
 

柱にはマイクジャックがありますが、カラオケ機器が撤去された今繋がるのでしょうか…。
 

車椅子スペースです。ここだけかさ上げされていませんが、まずステップを越えなければなりません。
 

続いて展望区画へと参りましょう。平屋区画とは一応仕切りの壁で区切られています。
 

展望室内です。窓の面積が大きくてとても開放的ですね。
 

運転台側から。やんわり後方の席が高くなっていますね。
 

天井です。照明は両側に寄せられ、カバーも大きくなっています。冷房の吹き出し口は観光バスでよく見られる回転式となっています。
 

窓です。側窓に加えて肩部分に天窓が追加されています。
 

座席です。ここは一般客室とは異なる座席形状をしており、ちょうどキハ185系の(元)グリーン席ような肘掛となっています。床は階段状として前面展望に配慮していますが、シートバックテーブルは特にかさ上げされていないので使用には注意が必要です。
 

一般席区画と展望室区画との間には荷物置き場があります。展望室区画には荷棚がないため、その救済処置なんでしょうね。
 

最後にこの列車最大のミステリーゾーン、キハ28-2010の半分に位置するコミュニケーションルームです。この車両が先頭に立った際に展望室が無くなるためのせめてもの罪滅ぼし的区画のようですが、ご覧のような座席配置な上に座席番号も存在しないため、全車指定席の列車であっても販売されない区画となります。まぁ販売されるとそれはもうマルス殺しになりそうですが・・。
 

デッキとの仕切りです。通路に合わせて仕切り扉が右側へ寄っています。
 

天井です。こちらはルーバーが水色となっています。また定員外のフリースペース扱いをメインとしているためか、荷棚は両側ともに有りません。
 

で、今回乗車時のハプニングを。どうやらこの日のKenjiさんはご機嫌ナナメだったようで、メインの照明が点かず非常灯が点いていました。夜行運用にも使えそうです。
 

窓です。こちらは大きく改造が施されており、本来四枚分程の大きさであった所を大型窓二枚になっています。全車これでもいい位だとは思うのですが(笑)
 

座席です。2+1の3列配置となっており、それぞれが交互に設置される形となっています。
 

ここにしかない1人掛けです。座り心地は変わりません。
 

なぜこんないびつな座席配置となっているかと言うと、画像のように全てを斜め固定とすることで最大6人グループで座ることが出来るようにしたためでございます。恐らくこれがコミュニケーションルームと呼ばれる理由でしょう。こうするとテーブルが無くなってしまいますが・・。これはジョイフルトレイン元年の登場にして今も現役であるJR西日本14系「サロンカーなにわ」仕様車でも見られる構造ですね。
 

あ、先代の緑塗装がチラリ・・(笑)
 

乗車時も老体に鞭打って走り抜いた感があった「Kenji」、JR線上最後のキハ58系列でしたが、姿を消してしまいました。