フランスの映画監督のジャン・ヴィゴは、生まれが1905年で亡くなったのが1934年ですから、29歳の若さで映画界を駆け抜けた伝説の人。作品は4本しか残しておりません。
「ニースについて(1930年・23分)」
「水泳選手ジャン・タリス(1931年・9分)」
「新学期・操行ゼロ(1933年・41分)」
「アタラント号(1934年・89分)」
長編はアタラント号のみである。ブルーレイで鑑賞しましたが、サクッと4本見終わりました。
彼の映画を見るためには予備知識が必要です。当時の時代背景を掴まなくっちゃいけないのですよね。
ブルジョワ階級に対する批判、権力や権威的なものに対する抵抗、いわゆるアナーキズムが作品の主題だったりするのです。もちろん映像も美しいシーンが多く、それだけでも十分に楽しめるのですが、「この怒りのルーツは何なんでしょ?」と少し調べてみました。
ジャン・ヴィゴの父親であるミゲル・アルメレイダはジャーナリスト。ボネ・ルージュ紙の編集主幹を務めていたそうです。時は第一次世界大戦の真っ最中である1917年8月6日にアルメレイダは逮捕され、5日後に獄中で首にひもを巻きつけられた状態で死亡、自殺として処理されたようです。ジャン・ヴィゴが12歳の頃のことですが、父の死後も脅迫や嫌がらせが遺族に及び続けたそうです。なるほどですね。
アタラント号の中盤からの映像美は素晴らしいですし、新学期・操行ゼロがヘルツォークの「小人の饗宴」に影響を与えていることも興味深い。たった4本の映像作品が後の映画界に与えた影響を考えると、ジャン・ヴィゴという方の「熱」は凄いものがありましたね。