
猿之助のかさね。
前半では、かわいらしさ、
いじらしさよりも、
与右衛門に捨てられる
焦りや恨みなどの思いを
強く感じさせました。
後半では鬼気迫る、
「この世からなる鬼女のありさま」。
しかし、ちょっとした余白から
あわれさがにじみます。
幸四郎の与右衛門。
美しさだけでなく、
凄みや後ろ暗さを感じさせました。
昨年7月の巡業では、同じ二人でのかさね。
熱気を感じる舞台でした。
今回は、このときとはまた違う印象。
歌舞伎俳優の皆さんは
コロナ禍のもと、劇場が閉ざされ、
これからの歌舞伎界のこと、
自分自身のあり方など
考えることが多かったと思います。
この期間中に得たものは、
何らかの形で、役者さんたちの芸に
ふくらみを持たせていると信じています。