ガキのころ、近所に一つだけ小さな映画館があったのだ。
深川の下町の映画館だからポルノばっかしやっていて、銭湯にいくと堂々とそのポスターが貼ってあったのだ。
だからガキのくせにムチムチとか、ムレムレとか、シッポリとか意味もわからずに知っていた。
そのくせシーズンになると『東映まんがまつり』はもちろん、『ゴジラ』、『ガメラ』などのメジャータイトルは必ず上映するので、おれも含めた下町のガキはポルノも、まんがまつりも、怪獣も、なんかゴテゴテなのだね。
古い映画館だったから小さいくせにステージがあったのだ、スクリーンの前に。
絶対に監督や役者の舞台挨拶などねーと思われるのだが、おれが生まれる前にはあったのかね、え?
まあ、映画館は小屋とも呼ばれるが劇場とも言われるからな。
おれが観た映画で一番古い記憶は『ゴジラ』だったよーな気がする。
怪獣ヘドラの回だと思うが、まだオムツが取れないおれが、親父の肩に手を付いてイスの上に立ってモノクロのゴジラを観た記憶もあるのだが、それは何かの間違いだろーな。
『東映まんがまつり』では、アニメの『長靴をはいた猫』をわりと覚えている。
東映アニメプロダクション、名前変わったっけ? あれのテンガロン・ハットの猫なのだ。
たしか西部劇で、流浪の身なのだがめっぽう銃の腕の立つ長靴をはいた猫がある街にやってきて悪を滅ぼすのだ。
最後に長靴をはいた猫がてめーの身分を明かすのだが、これがカッコいい。
今から思えばよくあるストーリーなのだが、ガキながらに感動したのだ。
あと不可解だったのは立体映画ってーの? 片目づつ赤と青のフィルターが入ったメガネをかけて、これまた赤と青で合成された『人造人間キカイダー』を観ると、いや、別に『キカイダー』じゃなくてもいーのだが、それが飛び出して見えるってーの。
見えねってーの。
ありゃー詐欺だ、気持ちが悪くなるだけなのだ。
まんがまつりでは、上映中ほどに休憩時間ってーのがあって、売り子のねーちゃんがラムネやアイスやポップコーンを客席に売りにくるのだが、この休憩時間がクセもので、おれも含めたガキが騒ぐ騒ぐ。
ラムネのビンを叩き割って中のビー玉取り出そうとしたり、ステージに上がってヒーローのまねごとしたり、そのたんびに親に叩かれりゃービービー泣きながら席に戻される、まさに修羅場なのだ。
んなもんだから、休憩時間もガキがおさまるまで続いたりして、上映時間もまばらなのだ。
その映画館で最後に観た記憶は『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の実写版なのだ。
今はどーしてるか知らんが、せんだみつおが両津の役で、内容はコメディータッチのポルノだった。
小学生のおれは一人で観にいって、困ったのだ。
女の裸に興味をもったり、興奮したりはない、裸は笑の対象でウンコチンチンの年頃だからな。
こんなの両津じゃねーやい。
今から三十年ちょい前、もっと前か、その映画館はなくなり今は赤札堂がある。
深川のニューシネマ・パラダイスなのだ。